灰色の犬の青色 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 一匹の犬を飼っている。その犬は全身が長い灰色の体毛に覆われているのだが、どういうわけか私はそこに青色が見えるような気がしている。おそらく一種の幻視なのだろうが、その青色がこの世のものとは思えないくらい美しいので私は暇があると犬を手元に寄せて背中を撫でている。

 飼い始めた頃は別に名前があったのだが、もう長らく私はその犬を『青色』と呼んでいる。犬も自分を『青色』と認識するようになったようで私がその名前を呼び掛けると手元に寄ってくるようになっている。『青色』と呼ぶようになってから私は一段とその犬の体毛が青色に見えるようになってきている。

 その犬の体毛から感じられる青色は私の心をすっかり魅了している。それと比較すると空も海もまるで物足りないと感じられる。私は灰色の犬から見える青色を愛さずにはいられなくなっている。世界で最も素晴らしい青色が身近にあるという幸福に感謝しながら日々を過ごしている。

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