トマトになる 3 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 しばらく私は台所でトマトだった人間を見つめていた。しかし、それはいつまで経ってもトマトに戻らなかった。私は運転手がトマトに変わった自動車や飛行機などが世界各地で大事故を起こしているのではないかと心配していた。ただ、人類が滅亡しようとしている現状において幾つかの惨事の有無などは取るに足らない問題であるような気もしていた。頭の中がすっかり混乱していて物事の大小がよくわからなくなっていた。

 トマトがトマトに戻りさえすれば人類が復活するのではないかと期待していたのだが、目の前のトマトはいつまで経ってもトマトに戻らなかった。そして、私はトマトに戻らないトマトをいつまでも見つめ続けているせいで人類が復活しないのではないかという気がしてきた。トマトがトマトに戻らない現実を否定しなければならないと思い付いた。

 そこで、私はトマトだった人間を冷蔵庫の中に仕舞って寝室に入った。現実を否定する為に睡眠を取ろうと考えた。夢を見れば新しい予言を受けられるかもしれないと期待した。私は寝床に横になってから目を閉じた。しかし、トマトの鮮やかな赤色が瞼の裏側に散ら付いているように感じられるのでなかなか寝付けなかった。


トマトになるシリーズ





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