ロッカーの落書き | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 夜勤前に工場の更衣室で作業着に着替えていた。何人かの同僚達と出勤時刻が重なったので混み合っていた。私は黙ったまま服を替えていたのだが、隣のロッカーを使っている同僚から話し掛けられた。「これは誰が書いたんだ?知っているか?」

 彼のロッカーを見ると扉に鉛筆で『死ね』と書かれていた。子供染みた落書きだった。前日に私が書いた文字だったが、改めて見てみて自分の幼稚さ加減に呆れ返らされた。私はうんざりとした気持ちにならされたので素っ気なく答えた。「さあね」

 「どうしたんだ?」と言いながら他の同僚が背後から声を掛けてきた。その声が大きかったので更衣室中の視線がこちらに集中した。しかも、さらに他の同僚達も会話に参加してきたので一段と周りが混み合ってくるように感じられて辟易とした。

 隣のロッカーを使っている同僚はまだ怒っていたが、私は着替えを済ませると更衣室から抜け出して作業場へと向かった。ちょっとした出来心で仕掛けた悪戯だったが、今となっては自分でも動機がよくわからないので当事者意識を持てなくなっていた。

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