『あなたは誰ですか?』(駅の壁)
『みなごろし』(駅の壁)
『いつ夢は醒めるのか?』(駅のトイレ)
『街をきれいに』(駅の壁)
『幸せへと続く道と思え』(駅の伝言板)
『愛してください』(職場のトイレ)
『死ね』(職場の更衣室)
『後ろを見ろ』(駅の壁)
これらが今日一日で新たに発見した落書きである。消せるものは消しておいた。しかし、消したままでは申し訳ないような気がするので帳面に記録しておく。常日頃から疑問に思っているのだが、なぜ私は失われる文字に対していちいち憐憫の情を抱いているのだろうか?印刷物ならば罪悪感も薄まるのだが、手書きの場合は放っておけなくなる。誤字脱字の訂正にさえいちいち気が咎めるので仕事にも支障が出ているし、押し入れに仕舞っている書類も溜まっていく一方である。我ながら困った性分なのだが、なかなか直せないでいる。
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