ロボットの紀行文 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 旅から帰還してみるとロボットが書斎の机に座って何かを書いていた。そういえば、私は自分の頭脳から発信される情報を基にした紀行文を作成しろ、という命令を出発前に出していたのだった。机の上を覗き込むと私そっくりの筆跡で文章が綴られていた。

 『旅から帰還してみるとロボットが書斎の机に座って何かを書いていた。そういえば、私は自分の頭脳から発信される情報を基にした紀行文を作成しろ、という命令を出発前に出していたのだった。机の上を覗き込むと私そっくりの筆跡で文章が綴られていた。

 床には文字がびっしりと書き込まれた紙が大量に積み上げられていた。旅立ちの日にちょっとした思い付きで出した命令だったが、このような執筆量になるのであれば紙の使用を禁止しておくべきであったと後悔した。こちらの思考を読み取っているはずなのだが、ロボットは命令を額面通りに遂行する癖があるらしく、私の思惑を充分には汲み取れない傾向があるのだった。

 旅自体は楽しい経験だったが、床にどっさりと置かれた紙の体積を目の当たりにするとロボットに書かせた紀行文を読もうという意欲はなかなか持てそうになかった。私はもっと短い文章にまとめるように指示を出さなければならないと考えた。そもそも自分の稚拙な筆跡では読み辛いので活字で清書させる必要があった。

 そして、そのような思案をしている最中にも文章がすらすらと記述されているので私はロボットに命令を出して執筆を停止させた』

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