朝からヨロコビが来訪したので家の中で一緒に遊んだ。色鉛筆と紙を手渡すと彼は熱心に絵を描いた。私達はテーブルに向かい合って座りながら互いの似顔絵を作製し合った。
久々の休日なので本当は片付けなければならない用事が色々と溜まっていたのだが、私はヨロコビの側から離れられなかった。ずっと彼の顔に浮かんでいる幸せそうな笑みを眺めていたいと望んでいた。
「永遠に君と遊んで暮らせていければ幸せだろうにね」そのように言うと彼はいつも以上に大きな笑みを見せてくれた。
昼になってもヨロコビが去らないので私は彼の分まで蕎麦を茹でた。彼は棚から食器や箸などを取ってきてくれた。もう何度も私の家に訪れているので大抵の物が収納されている場所を把握しているらしかった。
蕎麦が茹で上がったので私は食卓に持って行った。しかし、その時には既にヨロコビの姿がどこにも見当たらなくなっていた。私は大声を出して呼び掛けたが、反応が返ってこなかった。ヨロコビはいつも無断で退散するのだった。
仕方がないので私は一人で蕎麦を食べた。ヨロコビの分は残しておいたが、もう今日中は再訪しないような気がしていた。食卓の上には玩具や色鉛筆などが散らかったまま置かれていた。
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