「よお。感動をくれよ。心が渇いて仕方がないんだ。飢えてるんだ。苛々が収まらないんだよ。俺はすっきりしたいんだよ。なあ、あんた、持ってるんだろ?お願いだから感動をくれよ」
「あん?その苛々だって心の動きなんだから感動の一種には違いないだろ?それを愛でてろよ。あと、俺に馴れ馴れしい口を利くな。わかったか?」
「わかってるよ。だから、こうして頭を下げて頼んでるんじゃねえか。なあ、お願いだから俺の話をよく聞いてくれよ。いいかい?苛々なんて間に合ってるし、俺が必要としているのは、そんな類いの感動じゃねえんだよ。わからねえかな?もっと、気持ちがすっきりとするような、一時でも我を忘れさせてくれるような、心の底から笑いが込み上げてくるような、ぱあっと新しい世界が広がっていくような、そんな類いの感動が欲しいんだよ」
「高望みをするんじゃねえよ。大体、何も特別な出来事なんて起こらなくても心は常に動いてるもんじゃねえのか?それとも、お前は不動の精神でも手に入れたのか?お前はロボットなのか?」
「俺はロボットじゃねえよ。でもよお、心が渇いて飢えてるんだ。どうにかしてくれよ」
「ああ、ロボットじゃねえかもな。ロボットはそんな問題で悩まないだろうしな。でもな、だからこそだ、ロボットじゃないから俺は修理してやれない。自分でどうにかしろ」
「そうかい。せっかく頼んだのによお」
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