花束との遭遇 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 宇宙船の高感度レーダーが人工の漂流物を探知した。現場に急行すると、それは紙に包まれた花束であった。ロボットアームで回収し、現在は無人検査室で人体の害になる物質の含有量などを調査している。その作業と平行し、花束が辿ってきた軌跡をコンピューターで解析し、由来を調査している。乗務員の間では、過去に行われた宇宙葬の残滓であるという説が有力である。ちなみに、この宙域において大破した宇宙船やコロニーの記録は残っていない。

 高感度レーダーが捕捉できる範囲に人工物が漂流しているとは珍しい事態である。特に恒星系外においては希有な確率の遭遇だったのかもしれない。ただし、かなり昔から人類はこの宙域で活動してきたのであるから、まだ見つかっていないだけで、実際には相当数の人工物が漂っている可能性が高い。花束の発見は歴史ある宙域であるからこそ起こり得た事例であると推察される。

 今回の発見で乗務員達は一様に興奮している。早く花束を肉眼で見たいと願っている。博物館に寄贈するべきであるという意見が多勢を占めている。宇宙航行の退屈な日々を耐える為に乗務員達の感性は通常よりも陽気で楽観的な状態に設定されている。だから、頭の片隅では自分達の発見が本当にそれだけの価値を持つものであるのかという疑問を抱いている。いつか無事に航行が終了すれば改めて検証が必要になるだろう、と彼等は考えている。

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