曇天の電車 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 電車に乗っていた。休日なので私は会社とは無関係の方向を目指していた。電車は海沿いを走っていた。空はどんよりとした分厚い雲に覆われていて今にも雨が降り出しそうだった。風景全体が薄暗くなっていて、彼方に見える空と海の境目があやふやになっていた。既に沖合では雨が降っているのかもしれなかった。

 山と海に挟まれた窮屈な平地に小さな村落が点在していた。気分転換のつもりで電車に乗り込んだので私は深刻な問題が意識内に浮上してこないように注意していた。そろそろ下車しようかと思案していたが、車両が空いていて居心地が良いので私は数駅を見送った。

 そうして先送りしている内に雨粒が窓ガラスに当たり始めた。既に車外は日没直後のような薄暗さだった。私は傘を持参していなかったので電車から下りたとしても駅舎からは出られそうになかった。

 電車は小さな無人駅ばかりに到着した。どこも寂れていた。雨足は強まるばかりだった。あまり遠方まで見渡せなくなっていたが、海岸に大きな波が打ち寄せてきているように見えた。車外の光景がすべて絵空事であるように感じられ、私は強烈な眠気に襲われた。

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