空と同じ | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
「目次(超短編)」から全作品を読んでいただけます。
短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 晴れているが、急に雨が降り出した。額と頬に水滴が当たった。咄嗟にそれを片手の指先で拭うと青色である。私は頭上を見遣る。普段よりも空の青々しさが濃い。そこから水滴が次々と落下してきている。私はちょうど目の前にあった喫茶店に逃げ込む。素早く行動したので衣服などはほとんど濡れずに済んだ。しかし、青い斑点が幾つか出来ている。洗面所に入ってハンカチで顔を拭ったが、化粧が取れると面倒なので強く擦るわけにもいかず、かなり気を遣った。そして、窓際の席に腰掛けるとメニューを運んできたウェイトレスが話し掛けてきた。
 
 「雨が降ってきたようですね」

 「ええ。傘を持っていないので止むまでお邪魔します。とりあえず熱いコーヒーを頼みます」

 「かしこまりました」

 しかし、雨はなかなか降り止まなかった。雨粒は建物や道路などを徐々に青く染めていった。そして、夕暮れになると今度は黄色と橙色の水滴が落ちてきた。地面の水流は緑になってから紫に変化した。私はその喫茶店で夕食を取った。オムライスを食べた。食後には冷たい紅茶を飲んだ。雨は夜になっても降り続いていた。しかし、どうせ暗闇なので黒く染まったところで今ならば人目には着きにくいだろうと見切りを着け、意を決して帰宅する事にした。宿泊施設ではない喫茶店で朝を迎えるわけにはいかなかった。そして、レジに向かうとウェイトレスが心配して傘を貸してくれた。私は彼女に礼を言って店から出た。暗闇の中で黒い水滴は見えずらかったが、騒々しい音から判断して雨足はまだ激しい様子だった。

 迷子になって朝まで帰宅できなかった。

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