歩くロボット | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 一台のロボットが瓦礫だらけの道路を歩いている。道を歩くように持ち主から指示されたのである。それで、延々と歩き続けている。順路や範囲などは命令に含まれていないのでロボットはどこまでも道が続く限り歩き続ける。道が途絶えていれば引き返して他の経路を辿る。

 非常に頑丈な機体であり、自己修復能力さえ備わっているので故障の心配はない。それに、動作に必要となるエネルギーは周囲の自然環境から摂取できる。既にこの惑星の文明は滅亡していて人類は他の天体への移住を完了させたが、ロボットはここに彼等が生活していた証として、地表から跡形もなく道路が消え去るまで休まずに歩き続ける。それが持ち主から与えられた只一つの使命であり、ロボットにとっては他の動作に価値などない。

 ひたすら一つの行為に専念しているように見えるが、実際には脳内で凄まじい量の計算が行われている。惑星中を歩き回りながら道路の破損状況を調査して情報を常に更新し、可能な限り歩行を持続できるように進路計画を策定し続けている。

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