ある外国語圏で | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

アメーバブログにて超短編小説を発表しています。
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短い物語ばかりですので、よろしくお願いします。

 ここ数日、街には強風が吹いている。これは珍しい事態である。強風自体は頻繁に起こるが、吹き続けているという現象は珍しい。
 
 ひょっとして大規模な嵐の前兆ではなかろうか?私はそのような予感を覚えて友人達に相談してみるのだが、彼等はほとんど相手にしてくれない。私が指摘するまで強風などまるで気に掛けていなかった様子で、その発言に触れた後も興味を示す気配がない。その場を不自然な沈黙が支配し、そこに機転が回る人間がいれば速やかに話題が切り替わる。その反応はまったく理解に苦しむ。
 
 そういえば彼等が使っている言語には天候に関する単語が極端に少ない。雨は落ちる水であり、雪は落ちる低温だ。雲を示す表現はない。これは一体どうした事だろう?人類は空模様に興味を示さずに生きていけるものなのだろうか?狩猟生活にせよ、農耕生活にせよ、天候はかなり重宝される情報ではないのだろうか?それを無視して形成される社会など存在するのだろうか?ひょっとして彼等の先祖は地底人だったのだろうか?そういえば彼等の顔面には眼球がない。超音波で周囲の状況を確認しているのである。彼等は地底人の末裔だったのだ。それなら天候に関する単語が少なくて当然だ。私はようやく謎が解けて爽快な気分になった。

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