川辺で昼食 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 堤防の内側に公園が整備されていたので私はそこのベンチに腰掛け、川のせせらぎを眺めながら昼食を取る事にした。近くの食料品店で小さなパンを幾つか購入していたので、それが入った紙袋をリュックサックから取り出す。天候は穏やかで、風も強くない。私はパンを齧りながら午後の予定について考え始める。うっかり飲み物を入手し忘れたので喉に詰まらせないように一度に口に入れる分量を控え目に抑えておく。目前に川が流れているが、飲み水としては適さないような気がする。水鳥の姿が何羽か見受けられるので魚や貝などは棲息している模様だが、だからといって人間にとっても無害であるという保証はない。
 
 さて、午後から何をしようか?しかし、差し当たって予定があるわけではなく、緊急で解決すべき問題も思い当たらない。行ってみたい場所があるわけでもなく、会いたい人間もいない。なんだか満たされた気分である。過不足というものがない。脳裏に輝かしい程の純白が広がり、どのような想念も余計な穢れにしかならないという確かな予感がある。私はベンチの背もたれに上半身を深く寄り掛からせ、少しずつパンを齧る。念を入れて何度も噛み締める。唾液と混ざっていく。ちょっと塩分が強いように感じられる。そうだ、今、必要なのは水だ。それくらいしか思い浮かばない。幸せの馬鹿さ加減が気分をげんざりとさせる。

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