痛みの所在 | 山田小説 (オリジナル超短編小説) 公開の場

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 急に激しい腹痛に見舞われたので咄嗟に夢から覚醒して仰向けの体勢のまま目を開ける。すると、就寝前に消灯しておいたはずの照明器具が天井から煌々と室内を照らしている。そして、ベッドの脇に一人の女性が立っている事に気付く。彼女は白い服を着ている。髪が長い。僕と視線が合っても表情を出さない。顔立ちに見覚えはないが、かなりの美人ではある。ただ、それはあくまでも世間一般の規準を考慮しての評価であって、僕の個人的な趣向からすれば好みのタイプではない。そもそも佇まい全体から受ける印象が陰気過ぎる。
 
 しかし、僕自身も元来から興奮しやすい性格ではない為か、寝室に見知らぬ女がいるという異常事態に接してみたところで驚いてみる気力さえ湧かない。それどころか胸中に一片の感情さえ見当たらない。このまま数秒以内に夢の世界に舞い戻る事さえ不可能ではないような心境である。しかし、どういうわけか女性と合わせた視線が固定されたまま動かせない。そして、相変わらず腹が痛い。
 
 ふと僕はその女に腹部を踏まれている事に気付く。まったく奇妙な現象だが、ベッドの横に直立している女が二本の足で踏み付けているのである。それでいて僕の背中はやわらかな布団のぬくもりを感じている。どうにも理屈が合わない感覚が意識内に並存していると不審がっていると、腹部の側には女の両足だけではなく、床のひんやりとした感触まであるのである。つまり、いつの間にか長い筒状の臓器が胴体との連結を解消しないまま飛び出してベッドの下まで垂れていたのである。それどころか、赤色の体液が床を温めつつあるらしい。そして、僕は貧血状態に陥ったらしく、ゆったりとした長い時間を掛けながら徐々に意識を喪失していった。

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