平かな地面に仰向けに寝そべり、大空が刻々と変化していく様子を見つめる。旅先ののんびりとした午後である。視界の中央を白い雲がゆっくりと動いている。風を受け、徐々に形を変え、時には分裂し、また統合されながら移動していく。太陽が隠れると肌寒い。人間は世界の中に幾つもの基準を見い出しながら生きている。それらの物差しがなければ自分自身の存在さえ認知できないに違いない。生きている実感を得るには何らかの価値観に身を投じ、怖れずに情熱を燃やしていく気構えが必要であるに違いない。そして、私はぼんやりとした気分で空模様を観察しながら、とりあえず真面目に欲望を持って頑張ってみようか、という考えに思い至ったのだった。
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