この度、農水省は一度出した次官通知を改定するという今までありえなかった異例の措置をとることになった。
https://www.maff.go.jp/.../info/attach/pdf/171116-23.pdf
しかし問題は解決していない。最後まで読んで、良かったらシェア拡散して欲しい。
種子法が廃止されるとき、当時の農水事務次官が次のような通知を各都道府県に出した。
これまで各都道府県がコメ、麦、大豆の優良な種子農家に提供してきたことを直ちに取り止めろとは言わないが、
民間の種子を皆が作付するまでの間は、各都道府県はこれまで通り育種知見(知的財産権)を維持し、その間は民間に優良な育種知見を提供する役割を担うと。
そして、農水省は三井化学のみつひかり等(一代限りの交雑種で価格もこれまでの公共の種子の約10倍)、日本モンサントのとねのめぐみ等を奨励して回った。
ところが各都道府県は黙っていなかった、農家を守ったのだ。
それから3年、北海道から鹿児島まで26の道県で種子法に代わる種子条例を成立、公共の種子をこれまでのように農家に安定して提供してきた。
滋賀県、沖縄県も表明していて、準備中も入れると少なくとも32の道県で成立する見通しだ。
ところが、農水省はこの次官通知を次のように改定するという。
種子法が廃止されたからといって、これまでの「制度を直ちに取り止めることを求めている訳ではない」の”直ちに”を削除することにしたのだ。
農水省としては、これまでのように各都道府県が農家に公共の種子を提供する制度をやめてもらうことにかわりはない。
さらに、「原種、原原種の設置を通じて種子生産の必要性」を訴え、「地方交付税による財政的措置も講じる」ことも明記した。
このままでは各都道府県の農業試験場がなくなるのではと心配していたので1歩も2歩も前進である。
このような異例の改定は、市民運動によってここまで種子条例を作りあげてきた成果だといえる。
ところが、肝心な各都道府県の優良な育種知見の民間企業(多国籍企業を含む)への提供については
今回の改定でも依然としてその「役割を担うこと」としてかわりない。
(記事参照「日本農業新聞2021年3月31日」)
種苗法改定で心配なのは、登録品種が自家採種一律禁止になることである。
各都道府県に品種の育成者権利が残っている間はいいが、
農業競争力強化支援法8条4項では国、及び各都道府県の優良な育種知見を民間に提供するようになっている。
農家は各都道府県の登録品種を特産物として栽培しているのが現状で、それらの育種知見が民間企業に譲渡されたら、企業等に高いロイヤリティを払わないといけなくなる。
私達は種子条例に加えて、さらに各都道府県の優良な育種知見を守る条例を作らなければならないのでは。
農水省の次官通知とは、法律的にはどのようなものであろうか。
2011年の地方分権一括法、地方自治法改定でこれまでの主従関係はなくなり、国と自治体は同格で、国からの通知は単なる助言に過ぎないので法的拘束力は全くない。
むしろ条例は刑罰を定めることができる地方自治体の法律であり、次官通知より上位に位置するものである。