私は前にもその怖れを指摘していたが、何故か考えて見た。

長くなってしまったが最後まで読んで頂けば有難い。

 

日本のメディアは報道しなかったが、元々トランプのメキシコの壁の本当の意味は、

不法移民の阻止より、関税の壁のこと。

20年前に締結された北米自由貿易協定NAFTAは

当初こそ関税が撤廃されて自由貿易は国民を豊にすると持て囃された。

ところが今でもメキシコの賃金は5.3ドル、米国は23.5ドル約5倍の開きがあるのに、

メキシコから米国に輸出するのは関税がゼロなので国内生産と変わらない。

米国の自動車メーカービッグスリーは、激しい市場競争で利益を上げるには、

メキシコに工場を移転、逆に米国に輸出せざるを得なかった。

米国から2万の工場がメキシコに移転、デトロイト、ラストベルト地帯は惨状に陥ったが、

それでも今なお工場の流出は続いている。

 

それだけではない。

 

自由貿易は原則人の移動も自由になるので、

米国に最低賃金の半分以下で働くメキシコから移民は、今も後を絶たない。

貿易で得た利益は、一部の富裕層、多国籍企業に、

米国国民の賃金は42年前の水準迄下がり、失業さらに深刻になっている。

 

日本も例外ではない。

TPP協定では、ベトナムと日本の賃金の差は50分の1なので、

当然日本の自動車産業等はベトナムで生産して、

関税ゼロの日本に輸出してくることになる。

私はTPPに賛成しているトヨタの労組に、

「名古屋もいずれ、デトロイトみたいになるぞ」と嚇かしたことがあったが、

これが自由貿易の根幹なのだ。

 

トランプの勝利は米国国民がこれ以上自由貿易(TPP)を進めたら、

いよいよ食べられなくなるとして、オバマにノーを突きつけた。

トランプは直ぐにフォードの新工場、空調大手のキャリアに

「メキシコ進出したら、米国内への輸出には35%の関税をかける」と脅している。

 

フォードは小型車の生産をミシガン州で生産したら1台あたり14万円高くつくと言われている。アップルも中国での生産を断念した。

日本のメディアはトランプの口先介入だとしか報道しないが、

米国大統領には議会の同意がなくても関税を引き上げる権限がある。

 

しかも、NAFTAやWTOの離脱もほのめかしている。

トランプは、国民の生活が大事だとして、雇用を確保するために、

国内での生産に回帰させる狙いが明白だ。

その為にはメキシコだけではなく中国からも45%の関税、

日本も為替管理国として15~45%の関税をかけて来ることになる。

 

あまく見てはならない。

これを保護貿易だと日本のメディアは非難するのみだ。

私には宇沢弘文先生が亡くなる前に述べた言葉が忘れなられない。

「独立国は関税自主権を失ってはならない。

日本は江戸時代の不平等条約から関税自主権を取り戻すのに

日ロ戦争が終わる迄70年かかった」

 

米国もEUも、英国の離脱に見られるように

自由貿易の弊害を目の辺りにして流れは大きく変わった。

外需ではなく、内需に経済成長の軸足を置いている。

 

トランプは夫婦で580万円の所得には課税しないと大幅な減税、

国内での新たな投資には35%の法人税を15%にすると。

そして、傷んだ道路や橋に100兆円の財政出動をすると。

今、米国は空前の景況に沸いて株価は2万ドルを越えようとしている。

ところが、日本の安倍与党は二周遅れて

サッチャーの時代遅れの自由貿易の夢を追いかけている。

隣に韓国の失敗例があるのに。

 

私達は歴史的な時代の曲がり角に来ている。ここで進路を間違ってはならない。