10月に入って菅総理が所信表明でTPPへの参加の検討を述べた。
農業と漁業の再生を戸別所得補償で図っている現在、10年後に関税ゼロになってしまえば、それどころではなくなってしまう。APECに向けて政府は参加を検討しているようだが、私は大変心配している。
昨日は、とある編集者からゲラが送ってきた。
皆さんに読んで欲しい。
(転載開始)
10月21日、参議院会館1階の講堂に続々と与党衆参議員が集まった。その数、約110人。秘書の代理出席を含めると、約180人にもおよび、会場はぎっしりと埋まった。これは「TPPを慎重に考える会」の初会合で、会長には山田正彦前農水相、幹事長には松野頼久前官房副長官が就任した。
TPPとは、環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(Trans Pacific Partnership)の略で、関税を原則撤廃する自由貿易協定のこと。06年、シンガポール、チリ、ニュージランド、ブルネイの環太平洋4カ国が発効した自由貿易協定が発端で、米国、豪州、ベトナムなども加えた9カ国で11年11月合意をめざすものだという。
会場には鳩山由紀夫前首相、渡辺恒三党最高顧問らとともに、連立パートナーの亀井静香国民新党代表も出席。その亀井氏が、
「私たちは吹けば飛ぶような政党。しかし、TPPかPTAか知らないが、事前に協議していただくのが仁義だ」
と〝亀井節〟で挨拶をすると、会場からは一斉に大きな拍手で包まれた。というのも、多くの民主党議員が「私たちにとっても〝寝耳に水〟だったからだ」との思いがあるからだ。
1年生衆院議員が語る。
「10月1日に開会した臨時国会の所信表明演説で菅首相が突然、TPPへの参加検討を表明した。相手と品目ごとに自由化を協議するEPAやFTAに比べ、原則関税撤廃のTPPは、日本の農業を滅ぼす危険性がある。そんな重要な話をなぜ突然言い出したのか、理解しかねる」
会長に就任した山田氏も、党内議論が無かったことを認め、こう語る。
「今春、閣議決定した食料・農業・農村基本計画には、20年度に食料自給率を50%に引き上げる内容が盛り込まれている。その方針と反する危険性があり、非常に懸念している。国内で検討するにとどめてほしい」
しかし、なぜ突然、菅首相はTPPを持ち出したのか。政府関係者は声を潜めて、こう明かす。
「実は7月下旬、閣僚懇談会の席上で話が出た。米国からの要請で、当時の岡田克也外相や直嶋正行経産相が参加の検討を提案し、元々、新自由主義論者の前原誠司国交相も賛意を表した。しかし、山田農相一人が猛反発。そこで議論は中断となったが、代表選で菅首相が再選されたのを機に、山田農相は外された」
山田氏にこの話を聞くと「閣僚懇の話は明かせない」と言葉少なに肯定も否定もしなかった。つまり、TPP参加に向け検討を始めるとの菅首相の意思は、思いつきの発言ではなく、周到な準備で臨んだと見るのが正しいだろう。しかし、日本の農業は大丈夫なのか。民主党中堅衆院議員は憤りを露わにこう語る。
「まるで小泉・竹中政権に逆戻りです。何でも規制緩和すればいいという考え。何でも自由化の道を開くのはおかしい」
選挙区のほぼ全域が農村部という野田国義衆院議員も首を傾げる。
「民主党は昨年、戸別補償手当で農村部の票を集め、政権交代を果たした。その公約と真っ向対立する政策を議論も無しにトップがいきなり発言するのは理解できない」