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 昨日、友人から平泉の中尊寺の弁慶のお守りをいただいた。

「山田さん、弁慶のようにTPPに立ちはだかってください・・・・」

「有難う」と受け取った。

どうも私に、弁慶が矢を数十本も射られながら、死んでも仁王立ちになって義経を守った故事に例えて、とことんTPP参加を阻止して欲しいとの想いだろうか。

 

ようやく、今回のTPPは、これまでのような通商条約でなく、国の形そのものが損なわれることになりそうなことが一部のメディアでも取り上げられるようになった。

米韓FTAを見ても、国民皆保険の制度がすでに自由診療が認められるようになって、米国の営利法人の自由診療病院が認められている。

政府もこれまでは、TPP交渉においては医療の公的保険には交渉の対象外であるといってきたが、先日の厚生労働委員会で、小宮山厚生労働大臣も米国から公的医療保険において自由診療を求める旨の要望がきていることを認めた。

オーストラリア、ニュージーランドのケルシー教授らにリークされているTPPの交渉内容からも医薬品の認証、価格決定に関して、米国のルールを押し付けられていることが明らかになってきた。

国民もこれまでのように安価に薬を入手できなくなろうとしている。

 

それだけではない。

公共調達(公共事業)の分野では、今でも次々に倒産しているのに中小の土木建設会社は深刻な打撃を受けることになる。

TPPはもともとブルネイ、シンガポール、チリ、ニュージーランドの4カ国が原締結国だが、それをもとに話し合いが続けられている。それによると、これまで市町村もWTOでは23億円までの公共工事は国内優遇ができたが750万円以上の工事では英語と日本語で入札にかけなければならなくなる怖れが生じてきた。

 

食の安全も脅かされる。

現在TPPでは遺伝子組み換え食品の表示をできないようにするするための話し合いが為されている。

政府もそれらの怖れがあることを、ようやくペーパーで認めた。

残留農薬についても日本はコーデックス基準に従って厳しくしているが、米国が主導して、発癌性があるとして日本では禁止されているポストハーベスト農薬を認めさせようとしている。

厚労省も26の食品添加物についても怖れていること口頭で認めた。

大変なことになる。

今、放射能、セシウムなどが食品に含まれて、内部被爆のことが連日報道されている。

米国では輸出用の遺伝子組み換えのジャガイモを芽が出ないように放射線を照射している。

日本は禁止しているが、TPPに交渉入りすればそれらのジャガイモがどっと輸入されることになる。

 

昨日、TBSで弁護士資格のことがTPPでどうなるか放映されていたが、それだけでない。

越境サービスの分野で、医師、薬剤師、建築士、公認会計士、税理士などの資格が相互承認されることが明らかになってきた。

 

TPPお化けではない。

現実のものになるのだ。

 

それでも、交渉入りして情報を得てから、日本に不利益であれば撤退すればいいと前原政調会長は述べている。

しかし玄葉外務大臣も述べているように、一旦交渉入りすれば抜けられものではない。

先ず交渉入りするだけでも高いハードルがかけられている。

あれだけの農業国カナダも交渉入りを望んだが、自国の酪農製品の関税をゼロにする約束ができなかったばっかりに、交渉入りを断られたいきさつがある。

日本も例外なき関税の撤廃、コメなどすべての物品の関税を10年以内に撤廃することを宣言しなければならない。

経産省は当初からの例外が認められるようなことを喧伝しているが、そうではない。

外務省も関税ゼロの約束をした上で、交渉入りしてから、コメの関税について例外の可能性がないわけではないと述べている。

 

関税だけではない。

米国がねらっているのは、24の分野、金融、保険、政府調達(公共事業)、知的財産権、投資、紛争解決など多岐にわたる分野でのルールをTPP参加国で共通にしてしまおうと提案している。

政府のペーパーでも、随所に国内法の見直しが必要になると示唆している。

交渉に入る前に例外なくこれらのルールをマルチの交渉でのテーブルにあげることを約束しなければならない。

マレーシアが最後まで政府調達の国内優遇にこだわったが、ルールに従うことを約束して交渉に入ることができた。

 

しかも、交渉に入るには各国の同意、米国議会の承認が必要となる。

これだけでも、一旦交渉に入ったら抜けられないことが分るだろう。

あまりにも政府からの情報が不足している。

これでは国会の議論もできない。ましてや国民もTPPとは何だろうと思っているのが現状ではないだろうか。

私達政治家は、後世に「想定外だった」と言わせないようにリークされた情報を国民に知らせて、徹底的に議論を尽くさなければならない。

APECまでに参加の結論をどんなことがあっても出させてはならない。

 

考えれば考えるほど、大震災、福島原発事故の直後にこのようなこと言い出すこと自体許されることではない。

米国のワシントン・トレード・ディリーによれば10月26日の記者会見でカーク通商代表は「我々はこの交渉を長引かせたくない。政府はTPP交渉をドーハ・プロセスのように難航させたくない。そのような遅いペースに陥らないためには、米国政府は現在の参加国(9ヶ国)による構成が好ましい」と述べている。

なんとしても日本がTPPに参加することを阻止しなければならない。

 

私はそっと「弁慶のお守り」を握り締めた。

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