じかに聞いた田中稔社長の言い訳

北海道、苫小牧市にミートホープの工場を訪ねて、田中稔社長にお会いした。
今、話題の偽装牛肉の会社で、数年も前から偽装の情報が寄せられていたのに、農水省も北海道庁も何もしてこなかった。
今になって、お互いに責任のなすりあいをしている。民主党の農業再生運動本部長として、その実態の調査に現地に、岡本充功衆議院議員と一緒に出かけた。
田中社長は、ほぼ想像していた通りの肉屋さんといった感じのたたき上げの経営者ある。
「牛肉コロッケ」のひき肉に、全く肉が入っていなかったり、豚肉、ウサギ肉、鳥の皮、パンなどを混ぜていた、それだけではない、豚の内蔵、血、水などまで混ぜて、よくもこのようなことをしていたものだと思われるようなことをしていたのだが、本人はさすがに神妙にお詫びはしたものの、既に吹っ切れていて、何でも話し始めた。
「どうして、こうなったのですか」
「かつては、馬の死んだものでも牛缶として、販売していましたが、そんな風習のままにやってしまいました。
BSE騒ぎで米国からビーフパウダーが入らなくなって、コロッケなどの増量剤がなくなって、牛のひき肉の引き合いが急増しました。あちこち集めたのですが。どうしても不足して、豚肉など入れ始めました。
そうしていたら、国内でも牛肉のうち、ひき肉だけは、トレサビリテイ(生産者の識別符号の表示)が不要なことがわかって、ばれないからとなんでも入れ始めました・・・・・」
「なるほど」
「先生、デンマーク産の豚肉と米国産の牛肉を「合びき」にしたら、「国産」としてデパートで売っているではありませんか」
これには私も参った。確かに今のJAS法では加工食品に原産地の表示が義務付けられてない。衆議院で私の方で2回に渡って、加工食品すべてに原料原産地の表示を求める法案を出したが、与党の大多数の前に否決されてきた。
トレサビリテイ法でもひき肉は除外されたので、田中社長が指摘したようなことが、まかり通っていてもおかしくない。
「大手の食品メーカーはブランドで、販売していますが、実際にそれらの食品の製造に当たっているのは、中小のメーカーで、そこにひき肉などの材料を納めているのは我々なんですが、まともにやっていては、なかなか利益があげられないのが現状です」
「他にも、貴方の会社みたいなところもあるのでしょうか」
田中社長は口を濁してしまった。
そして意味ありげなことを言い始めた。
「たとえば、学校給食の鳥のもも肉にしても、うちが納める前までは、競争入札でキロ560円ほどだったのが、うちがこうなってからは既にキロ1340円に跳ね上がっています・・・・・・」
まともに国産のものを納入している業者はいないということだろうか。

内部告発者の怒りの対談

私達は、今回の内部告発者である、元ミートホープの幹部に、2度にわたってお会いしていろいろないきさつを聞くことができた。
「工場の陸屋根の雨水をためて、それで冷凍食材を解凍したり、容器を洗っていたのです・・・」と驚くべきことを話し始めた。
さらに
「昨年、4月下旬に退社したのですが、その直前、私は苫小牧の農政事務所に、ひき肉のサンプルを作らせて持っていったのです。当時の幹部としての肩書きを書いた名刺を渡して、このサンプルのなかには牛肉だけではなく、いろいろなものが混じっていますので調べてくださいといったのですが、担当の方が、それだけでは信用できないと言って受けつけてくれないのです。やむを得ず会社に戻って、ミーとホープ社のシールを貼って、もう一回行きました。それでも取り上げてくれないのです」と述べる。
調べると既に平成14年にも53回に渡って「表示110番」に通報されていて、北海道新聞にも掲載されている。もし、内部告発者の言い分が正しくて、そのまま放置していたとしたら、大変なことである。

農水省出先の呆れた無責任ぶり

私達は、すぐに苫小牧農政事務所にその真偽を確かめに行った。アポもとらずに行ったので、事務所ではそうとう慌てていたが、内部告発者に対応した責任者は札幌の本庁にいるとのことで、あわせてもらえなかった。当時の受付帳簿類も一切見せてもらえなかった。
その足で苫小牧の保健所に出かけた。
昨年から4回に亘ってミーとホープ社に立ち入り調査したいきさつを当の担当者からもかなり詳しく聞くことができた。
従来の保健所での立ち入り検査は、単なる衛生面上での調査で、実際にウサギの肉などの混入の疑義の情報が提供されていても、冷蔵庫を開けて、目視するだけで終わっている。これまでに、当の現物ひき肉などを持ち帰ってDNA鑑定の依頼をすることなどはなされていなかった。
この後、北海道庁で聞いても、そのようなマニュアルさえできてなかったことが明らかになった。
それよりも問題の北海道の農水省、農政事務所では、所長も部長もすぐ側にいる当時の責任者にお会いしたいといっても、ひたすらに勘弁してほしいと謝るだけで、当時の書類の説明すらしようとしない。
確かに昨年3月23日、ミートホープの偽装表示肉事件について、北海道庁の生活環境課に通知したとの書面は、既に入手済みのものをいただいたが、その後の北海道庁の局長の話では農政事務所から連絡を受けた事実は無いと言い切っている。
一体どうなっているのだろうか。
このままでは農水省の組織ぐるみの責任逃れ、隠蔽工作だと言われ手も仕方が無いではないか。
私達は、民主党の高木義明国対委員長に連絡して、本省の官房長に調査に協力してもらえるよう要請して、夜9時ごろまで粘ったが、なんの進展も無かった。
疲れた。