骨折した。五島列島の若松島でのこと。夜の9時ごろ魚住君のお父さんの初盆のお参りをして、そのままお盆のご馳走をいただいての帰り道、波止場の夜風はさすがに涼しいと暗い道を一人でふらふらと歩いていたら、溝に落ちて転んでしまった。

痛かった。一人で起き上がってしばらく座り込んでいた。

末竹君が自分の漁船を出して福江までつれて行ってもらった。足をかがめて末竹君の奥さんが用意した毛布に包まりながら漁船のダ、ダ・・・とうなり続けるエンジン音をききながら不安にかられてきた。

漁船の小さな窓から真っ暗な海、そして無数の星の輝きが見える。

福江で五島中央病院の緊急患者外来に行った。夜中の12時過ぎているのに、赤ちゃんを不安そうに抱っこした若い夫婦とか5,6人が待っている。

レントゲンに目を通した若い医者がこともなげに「骨折です。手術しますか」と投げかける。内心、捻挫ぐらいだろうとたかをくくっていた私は一瞬がっくりしたが、覚悟した。

それからすべての予定をキャンセル、松葉杖と車椅子で上京、急遽、東京女子医大に入院することになった。