血液製剤フィビリノゲンによるC型肝炎の問題は、調べれば調べるほど許せない問題である。
私は先月の31日、厚生労働委員会で質問に立った。
米国では既に1977年には、肝炎発症の恐れがあるとして、FDAでは使用も製剤も禁止されている。しかも止血剤としての薬として有効性そのものが問題とされている。
生まれながらにしてフィビリノゲンが不足している人にだけは、補うものとして薬効は認められるが、お産のとき、大手術のときの止血剤としての効果は、当初から疑問視されてきた。
厚生労働省の「血液製剤評価委員会」でもその有効性に問題ありとされていた。
それなのに、日本では1987年まで、そのまま使用され続け、各地で肝炎発症の疑いありとの報告がなされていたはずだが、新聞でも報道されるにいたって始めて、厚生労働省は動き出したのだ。
当時の厚生労働省への青森県の三沢医師の報告は生々しい。
「ミドリ十字から安全であると言われて、止血のために使ったものの、8例中8例が発生(100%感染)他の医療機関でも多発しているものと思われる」
本来ならば、そのような報告が相次いだ時点で、直ちに回収しなければならなかった。
ところが厚生労働省に残されている当時のメモでは
新聞報道されてからも
「会社からは積極的に話をしないよう、やむを得ず公表するときは・・・・・報道関係者には特に注意してほしい・・・・フィブリノゲン関係の窓口は必ず一人に絞ること、厚生省は牧野室長にしぼる・・・・」
とあって隠ぺい工作を会社側と一緒になってやっていたのだ。
それだけではない。
旧厚生省はそれまでの非加熱製剤を加熱製剤にして、それまでの「フィビリノーゲン」を新しく「フィビリノゲン」として新薬としての承認を、通常なら2年から1年半はかかるのに、たった10日間でやってしまうと言う離れ業をやってしまった。
1987年4月15日付けの担当者のメモが残されている。
「加熱製剤の承認申請は4月20日を予定しており、4月30日の血液製剤調査会で審議をおこない、同日付で承認する」とある。
さすがに旧厚生省も不安だったんだろうか。
メモのなかに
「加熱製剤を使用しての肝炎発症があったときにはどうするか」
とある。
許せないのは非加熱製剤の回収にしても旧厚生省は
「自発的に行わせる・・・回収の際医療機関が不信に思わないか、肝炎対策の万全を期すためと説明して加熱製剤を使用してもらう・・・・・」とあり、
さらに当時の副作用情報室長牧野氏との打ち合わせメモにも「ミドリ十字に理論武装の必要がある・・・血液製剤が使われた場合の患者の不利益についてやむをえないことを述べている文献はないか」などと
明らかに旧ミドリ十字側にたっていて、微塵も国民の命と健康を守る官庁とは思えないさまが浮かび上がってくる。
結果は恐るべきことになった。
旧ミドリ十字の長野県松本市の社内報告書によれば「フィブリノゲンHT(加熱製剤)を使用して4例中4例(100%の感染率)に発症」が報告されるなど多発した。
加熱製剤によって、さらにC型肝炎の感染は激増することになったのである。
フィブリノゲン血液製剤は1986年から加熱製剤に変わった1997年から99年までの4年間に集中的に使用されている。
旧ミドリ十字からの厚生労働省への報告によれば使用本数53万8300本、推定使用者数28万3515人推定肝炎発生者数i万594人とされている。
私は2002年に厚生労働省に報告されて、患者に告知されずに放置された、マスコミで大きく報道されて問題になっている418人のリストを加熱製剤と非加熱製剤それぞれに分けて棒グラフに整理した表をいただいた。
色分けしているのでわかりやすいが、それでは加熱製剤になってさらに感染が増え続け418人中なんと204人になっている。
フィブリノゲンの製剤の方法は1万人の血液を集めて、ひとつの釜に入れてかき混ぜるので、一人の血液にC型肝炎ウイルスがあれば、すべてのフィブリノゲン製剤が汚染されたことになる。
私はその可能性は高いと思うのだが、松本支店からの報告のように100%の感染率であるとすれば、加害企業旧ミドリ十字の報告による感染率3.8%はあまりにも過少に報告しているもので信用できない。1万人どころでなく28万人の人がC型肝炎に感染したことになるのではないか。
多くの人が病院で使われた血液製剤による肝炎と知らないままに、身体がだるいと思いつつ、そのうちに慢性肝炎、肝硬変、肝ガンで亡くなっているのだ。
現在一日に肝炎で亡くなっている患者は120人にのぼるといわれている。
これは企業と組んだ国家の犯罪である。
慢性C型肝炎の患者は肝硬変になる前に、インターフエロン治療を受ければ7割の人が完治するといわれている。
私は舛添大臣に吠えまくった。
「一刻も早くフィブリノゲンを使用した7004の医療機関を新聞紙上で再び公開して、その病院でお産、手術を受けた国民に検診を受けていただくように、不幸にして肝炎に感染していれば、国と企業の負担でインターフエロン治療を受けてもらわなければならない」
大臣は答えた。
「そうしたい」
ところが翌日、毎日新聞にも大きく報道されたが、厚生労働次官は広告費用に4億円かかるとして新聞広告を否定した。
官僚国家日本は情けない。