壱岐の郷ノ浦港からジェットホイルで約1時間10分。
船から下りてタクシーで福岡空港に向かった。
「お客さん、今の政治家はだめですね」と運転手さんが語り始める。
どうやら私が政治家とは思っていないらしい。
「後期高齢者にしても、年金にしても目先のほころびを繕うことしか考えてませんね。
もう少し20年、30年先のことをしっかり考えてほしいですね。
国がどういう風になっていくのか、誰も語ってくれませんね。
これでは、税金を払っているわれわれは浮かばれませんよ」
なるほど、この10年、私たちはその時々のことだけに、総力を傾注して戦ってきた。
「お客さん、私は40年間、60歳になったら年金で、家内と二人で悠々と暮らせるとそれだけを夢見て、年金を、それこそ一生懸命払ってきたのですよ。
政府は物価が上がったら、年金も上がりますと約束して法律もそうなっていたではありませんか」
「国はどんな権限で勝手に約束を破り、法律も変えて、年金もどんどん減らされて、今度は保険料まで年金から天引きされたら、食べていけませんよ」
次第に運転手さんのボルテージは上がってくる。
「年金で食べていけるどころか、こうしてタクシーの運転手のアルバイトでもしなければ、食べていけないんです。
しかも来年70歳になるんですが、もみじマークをつけないと罰されることになっちまって・・・・・・
どうしたらいいんでしょうね」としんみりとなってしまった。
政治家は何を考えているんでしょうね、こんなことでは高い月給もらっている政治家なんて要りませんよ」
曖昧にうなずいていた私も返事できなくなってしまった。
「・・・・・実は、私も代議士なんです。政治家として恥ずかしく思っています」と小さな声で答えた。
驚いた運転手さん、後ろを振り向いて
「頑張ってください」と逆に励まされた。
目先のことの繕いではなく、もっと基本的な国の形について、私の中にできているだろうか。
道は遠い。