郷原検事に年金の組織ぐるみの偽造問題でお逢いしたが、なかなかはっきりとものを言う人だ。
数年前、長崎での自民党県連の不正献金事件では辣腕を振るった検事で私の頭から彼のことはいつも気になっていた。
私も弁護士だが、仲間の話を聞いても政治資金規正法で、いきなり逮捕、強制捜査は聞いたことはない。
確か土屋埼玉県知事の問題で強制捜査を受けたことはあったが、そのときは全くの会計責任者でない人に虚偽の記載をしていたのであって、今回の小沢の秘書の容疑とは異なる。そのときも知事を辞めることで、「反省が見られる」として起訴猶予処分にした。
今回は政治資金規正法では、献金をした寄付者を明らかにするようになっているので、そこが西松建設OBらで組織する団体であれば、その通り記載しなければならない。
それが事実上西松建設のダミーであったのか否かまで求めていない。
仮に認識があってもそれだけでは有罪になると言えない事案である。
企業献金が禁止されているわけではなく、西松建設の分は岩手県の党総支部で入金記載がなされている。
形式犯として有罪としても、これまでの例からして秘書の罰金で終わる犯罪である。
普通なら行政指導で終わらせているものを、どうしての秘書の逮捕、強制捜査まで東京地検特捜部が動いたのか理解できない。
小沢側に工事をめぐっての「収賄罪」につながる証拠でもつかんでの強制捜査ではないのか。
私は心配した。
「そんなことは一切ない」と小沢はきっぱりと言い切る。
しかし、新聞、テレビの報道では、いかにも東北のダム工事をめぐって、工事を秘書が仕切っていたかのようなことが連日大きく報道される。
しかも大久保秘書が大筋では認めているなどと、捜査側から出ないと分からないような事実が、もっともらしく報道される。
大久保秘書の弁護団は否定している。
裁判員制度が導入される今日、国民に予断を与えてはいけないのに、検察庁のこのようなリークは、何らかの意図があるとしか思えない。
しかも公務員の守秘義務違反でもあり許されない。
私は衆議院法務委員会でこのことを追求した。

しかしながら、拘留期限の24日までは心配だった。

24日が過ぎて東京地検は政治資金規正法だけで起訴した。
私はほっとした。
起訴そのものには裁判で争っていけばいい。
これだけであれば、小沢代表には続投していただけねばならない。
むしろ、自民党側への強制捜査がなければ、おかしい。
長く続いた自民党の一党支配は官僚主権国家とも言える強固な体制を築き上げた。
ぶち壊すことは容易でない。