2月6日の朝日新聞に、障害者自立支援法の施行による利用者負担の増加で、身体障害者の入所施設サービス利用者13万5000人のうち598人が利用を中止し、通所サービス利用者8万6000人のうち1027人が利用を中止したと、厚生労働省が発表したとなっているが、私には全く信じられない。
私は先月大村市の障害者の皆さんと何度か会合をもったが、「今回の障害者自立支援法は自立阻害法案だ」と激しく非難していたので、大村市内の身体障害者の援護施設を7箇所ほど廻って驚いた。
少なくとも30年は、傍目から見ても、えいえいと良心的に続けてきた、ある身体障害者の施設では、同法の施行によって3万8000円ほどの負担増に耐えられなくなって、50人のうち14人が辞めてしまったという。一挙に2割以上の激減である。
「これでは運営ができません」と嘆いていた。
私が見せていただいたいくつかの通所施設にいたっては、もっと深刻である。施設の障害者の送り迎えも、施設で購入した中古のマイクロバスでガソリンも自己負担(国からの助成金無し)でしているのに、それでも父兄が負担している月額の費用よりも、スーパーなどの袋詰めの仕事をしてもらう手当てが少なくなったからと、障害者の子供を作業用施設に通わせられなくなった父兄も少なくない。
それほどまでに、格差社会の広がりで、家族はわずかな負担も耐えられなくなっているのだ。
私は、大村市の知的障害者の通所の作業用授産施設では思わず感動した。
知的障害者の父兄の集まりで組織する「手をつなぐ親の会」で募金を集めて、造られたという100平方メートル足らずのプレハブづくりの小さな施設だったが、20人あまりの子供たちが、嬉々として、ミシンを踏んだり、えのきだけ(きのこ)栽培用の小瓶をせっせと洗っていた。学校の先生を定年退職して、ボランテアで働いているらしい所長さんが誇らしげに語ってくれた。
「この子供たちの親御さんがミシンを踏めるようになったと涙を流して喜んでくれるんですよ」
それだけでも、福祉が目指している、なんと素晴らしい身体障害者の社会復帰の姿ではないだろうか。
「これらの仕事はどうして探すんですか」
「3人の職員が探してきて、あのように一緒になって仕事しているんです」
こうしてどこでも、ヘルパーの職員は、障害児の日常の生活指導からあらゆることを一人三役でこなしながら、それでも運営費の公的支援は年間1000万円足らずしか入らないから、聞くと給料は微々たるものである。
それでも自立支援法の施行で今年度半ばには運営費の助成が25%カットされそうだとこぼしていた。

私は話を伺いながら、身体障害者の社会福祉の現場が、このところ急速に混乱、深刻になってきていることをひしと感じた。
まず今回の法律によって
① これまで入所施設(身体障害者が車椅子などで寝泊りして生活している宿泊施設)で、重度の場合には風呂にも入れてもらいながら、昼間に施設内でスーパーなどの商品の袋詰めなどの仕事、授産施設としての作業もできていたのが、これからはできなくなって他に宿泊所を求めなければならなくなること。これは大きな無駄で間違いであること
② さらに障害者のお世話をするのに、これまで月ごとに公的ケア料を負担していたものを、実際に通ってきた日割りで計算することになり、施設側として大幅に運営費が減らされることになった。一見合理的なように見えるが、身体障害者はもともと身体が弱く、毎日通うことは無理で、そのための介護者を待たせて置くような余裕は施設にないので、事実上サービスの切り下げになっていること
③ 障害者のうちにも、いろいろな人がいて、知的障害者、精神障害者、身体障害者のなかには車椅子などの肢体障害者などそれぞれ事情が大きくことなっている。私も恥ずかしいことに、今回現場を廻るまで、知的障害者と精神障害者の区別も付かなかった。政府は障害者の一元化を諮って、一緒の施設に入れることにしたが、現場は大混乱をきたしている。
私が廻ったこれまで知的障害者を主に受け入れていた施設では、精神障害者が入ってきて危ないと語っていたし、精神障害者を中心に受け入れてきた施設では、知的障害者を一緒にされると、精神障害者にストレスが来て混乱してしまうと嘆いていた。聾唖者の人と全盲の人とも違う。
東彼杵町にある身体障害者の施設では、9割までが全盲の身体障害者たちで、土をこねて皿など食器の陶磁器を作っていたが、手の感覚だけで器の厚みをわかるには3年はかかると聞いて納得がいった。
味わい深いコーヒーカップをわけていただいてきたが、私にとって何から何まで始めての体験で、政治家として恥ずかしく、かつ、「現場が何より大切であること」を改めて教えられた。
このように、身体障害者はそれぞれの持つ障害がことなるのに、今のシステムでは県の社会福祉事務所からの、機械的な割り当てに従って、各施設は、これまでの培ったノウハウとは無関係に、それぞれの障害者を受け入れざるを得ない状況になってしまった。
これでは現場が混乱するのは当たり前である。
よくあることだが、行政官僚が現場もよくわからずに、机の上だけで作りあげた法律案では駄目だ。ことに小泉政権が郵政改革だと国民をうならせ、その間に多数に物を言わせて、ろくな審議もせずに通した、名前だけが立派な「障害者自立支援法案」は、財界の意向を汲んだ財政改革のための一方的な福祉切捨て法案に過ぎない。
私たちに責任がある。
本気で早急に是正に取り組まねばならない。