政権交代前から、我々は自然再生エネルギーの全量固定価格買取制度をマニフェストに掲げていた。
ちょうど福島原発のメルトダウンが始まる前日の3月11日閣議で固定価格買取制度を国会に法案として提出することが決定された。
ところがなかなか審議に入れない。大地震と津波で原発が次々に止まって計画停電、厳しい節電要請が続いている。
このようなときこそ固定価格買取制度の法案の成立が急がれる。
ところが法案が審議される予定の衆議院の経済産業委員会では他にも法案があって審議順位は4番目だそうで、これではこの国会での法案の成立は望めない。
鉄鋼業界はじめ、産業界は電力料金が上がるとして反対している。
米倉経団連会長も「そうなれば、国内から日本の企業が海外に出て行く」と公言している。
これでは法案の成立が難しくなる。
私は心配になった。
折から、エネシフジャパンを主宰してきた社民党の阿部知子議員の呼びかけもあって、筒井信隆農水副大臣と相談した。
「菅総理が自然再生エネルギー法案に関心を持っている噂がある。退陣の花道としてこの法案の成立を図ってもらえないだろうか」
「それはいい。急ごう」
こうして、近藤昭一環境副大臣、平岡秀夫総務副大臣と語らって法案成立を目指して署名運動を始めることにした。
手分けして回った。
自民党、公明党からも署名をいただいて、金曜日、月曜日と2日間でなんと203名の署名が集まった。
こうして、官邸に筒井副大臣を先頭に、自民党の河野太郎議員ら数人で署名を携えて官邸で菅総理に法案の成立を督励した。
さらにエネシフでも、ソフトバンクの孫正義社長を国会に急遽お呼びして講演会を大々的に開いて機運を盛り上げることにした。
エネシフの会場に突然菅総理も現れて、菅総理と孫さんとが再生エネルギーを巡ってのエールの交換になってしまった。

こうして、菅総理は自らの退陣の条件として、震災復興の補正予算、特例公債法案、再生エネルギーの固定価格買取制度の法案、3法案の成立を条件としている。
震災の補正予算は成立して、子供手当ても自公に妥協して来週には特例公債法案成立する見通しが立ってきた。
ただ一つ、再生エネルギー法案がまだ目途が立っていない。
鉄鋼業界など経済界も激しい反対の動きを見せている。
水面下では修正の動きも出てきた。
海江田大臣も国会で「電気料金を抑えるために賦課金を0,5円で押さえたいと国会で答弁するにいたった。
これでは2020年までに自然再生エネルギーはこれまでの4%しか増えずに、菅総理が国際会議で約束した「日本も2020年の始めには再生エネルギーを20%にはしたいと言ったこととは大きくかけ離れる。
これでは法案は成立しても、事実上骨抜きになってしまうことになるのでは。
心配している。
今この法案をともあれ、キャップをかけずに成立させれば、太陽光発電、風力、小水力、バイオマス発電など一気に弾みがつく。
考えれば、確かに日本は化石燃料の資源が乏しい。年間25兆円、GDPの5%は輸入の燃料代に使われている。
しかし、太陽光においては日照時間がドイツの倍ほどあり、島国で風力にも恵まれ、何よりモンスーン地帯で降雨量も多く水力発電に向いている。昔から、日本の村社会には水車が8万基もあって大切な動力源であった。
また日本は火山地帯なので今回のような地震も多発するが、地熱発電にも最適の国でもある。
自然再生エネルギーを考えると日本が一番恵まれていることになるのではないだろうか。
それに再生エネルギーの、太陽光、風力、地熱にしても最先端技術としては、世界でも日本が一番進んでいるといえる。
固定価格買取制度の法案が成立すれば、太陽光パネルにしても、現在平均価格で1KWH当たり56.5万円しているが、5年以内には10分の1まで価格も下がることが予測される。
ちょうど、数年前液晶テレビが40インチで50万円していたものが今では4,5万円、10分の1に下がったように。
ドイツでも1KWH当たり62円で全量固定価格買取制度を始めたが、今では29円まで下がり、37万人の新たな雇用を生んでいる。
現在家庭での電気料金は1KWHあたり25円しているが、いずれ太陽光はそれよりも安くなる可能性を秘めている。
それだけではない。
蓄電池の技術も日進月歩で進んでいる。今年の12月にはNECが従来の価格の半額でリチウム電池の販売を始める。
住友電工もナトリウムイオン電池を2015年には10分の1の価格で販売する予定と報道されている。
風力発電においても部品だけで2万点といわれ裾野の広い分野である。
まさに再生エネルギーはデフレに苦しんできた日本にとって、起死回生のイノベーションをもたらしてくれるのでは。
なんとしても、この国会で再生可能エネルギーの買取法案を成立させなければならない。