行政書士試験・平成25年度・問題5・解説③ | 山田優の★行政書士試験憲法の分析★

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行政書士試験の憲法の過去問について分析するブログです。
分析の手がかりは芦部信喜著『憲法』(岩波書店)のみです。
「芦部憲法」があれば行政書士試験の憲法の問題は解ける!
ということを示したいと思っています。

こんにちは、行政書士の山田優です。

 下記の説明が少し難しいと感じる人はコチラの
「山田優の☆ちゃんテキ合格☆行政書士試験」
の補足説明を読んでみてください。



 権力分立に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

2 政党が政治において主導的役割を演じる政党国家化が進むと、議院内閣制の国では議会の多数党が内閣を組織するようになり、内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組みが、一般には、より実効的に機能するようになった。


 この選択肢が妥当か否かだけを判断するのであれば、議会の多数派が内閣を組織する状況では、議会の多数派が自ら選んだ内閣について不信任案を可決することはありえないのであるから、内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組みが実効的に機能しにくくなることは容易に判断できるであろう。

 ここでは、①政党国家、②議院内閣制についての基礎知識について確認しておこう。

 ①政党国家については、選択肢が「政党が政治において主導的役割を演じる」と、コンパクトに叙述している。芦部憲法においては、「国民と議会を媒介する組織として政党が発達し、政党が国家意思の形成に事実上主導的な役割を演ずる『政党国家』の現象」と説明している(芦部14-1-2)。

 ②議院内閣制についても、選択肢において、「内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組み」と説明している。芦部憲法においては、議院内閣制の本質的要素は、A-議会(立法)と政府(行政)が一応分立していることとB-政府が議会に対して連帯責任を負うことの2点であるとしている(芦部15-3-1)。

 ここで留意すべきであるのは、政党国家化が進む前と後とではどのような変化が生じたのかという点である。本選択肢では、議会の多数党が内閣を組織するようになったために、「内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組みが、一般には、より実効的に機能するようになった」としている。この点が妥当でない。

 芦部憲法によると、政党国家の現象によって、伝統的な議会と政府の関係は、政府・与党と野党の対抗関係へと機能的に変化した結果、伝統的な議院内閣制を特徴づける政府の議会に対する連帯責任や国会による立法ないし行政監督の諸原則がもつ政治的意味は大きく変わったとされている(芦部14-1-2)。これは「権力分立制の現代的変容」の一側面である。



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