凶獣の村 捜査一課強行犯係・鳥越恭一郎3 | 山田屋古書店 幻想郷支店

山田屋古書店 幻想郷支店

物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は櫛木理宇。

 

元警察官の三ツ輪が何者かに殺害され、彼とドライブ中だった孫娘の楓花が行方不明になった。その後、身代金を要求する手紙が届き、営利誘拐事件として捜査本部には特殊班係も投入された。L県警捜査一課の鳥越恭一郎と水町巡査は特殊班の応援として捜査本部に加わることになる。三ツ輪の遺体が発見された胎岳村はかつて少女の殺害事件が発生した場所で、未解決に終わったその事件には三ツ輪も関わっていた。未解決に至った要因の一つがその村に本拠地があった天の大家族・十雪会という新興宗教団体の存在だ。既に解散してはいるものの、村には残党がいまだに住み着き、今回の事件でも関連を匂わせる証拠が見つかる。

 

生まれつき鴉と仲良くなれる能力を持つ捜査一課の刑事、鳥越恭一郎が主人公となる警察小説の第三弾。西洋の血が入っている彼は容姿が良く、それを冗談に出来る明るさを持っている。しかしそれは表の顔で、実際の彼は鴉以外は何者も信用しない、根っからの優秀な猟犬である。

 

今回、その鳥越とコンビを組むのが元捜査一課で、現在は所轄の刑事課にいる長下部である。かつては県警の優秀なマル暴刑事だったが、心が折れ現在は無気力なゴンゾウと化している。これは三ノ輪も辿った道で、どこか彼に似た風貌もあり、ただのゴンゾウでは無さそうである。

 

鳥越と長下部は前線本部が置かれた胎岳村で捜査活動を始めるが、村にはどこか異様な雰囲気がある。かつてヤクザと繋がっていた十雪会、そして市議会とヤクザとの癒着。その中でひときわ異彩を放つのが死んだ教祖の妻、辻みち子だ。彼女の周囲には鴉が集まり、もしかしたら能力者なのだろうか。


面白かったけど、ラストの展開が急すぎて理解するのが大変だった。怒涛の展開、と好意的に捉えることも出来るが、もう少しじっくり描いてくれても良かったかな。鳥越の珍しい一面を見れたのは嬉しかった。身内以外では初めての理解者かもしれない。続編で死にそうで怖いけど。


次は中山七里。