逆転 二係捜査2 | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は本城雅人。

 

10年前に発生した日野事件で無罪になった野村が再び逮捕された。今回も少女を連れ去り殺害した容疑で、当時捜査にあたった刑事たちは、あの事件で野村を有罪に出来ていれば、と歯嚙みした。日野事件の裁判では一審で無期懲役の判決が出たが、二審で逆転無罪となり、野村は無罪放免となった。弁護士の岸が取り調べにあたった信楽刑事が暴力で自白を迫ったと主張し、それが採用された形だ。裁判の終了後、信楽は岸にも暴力をふるってしまい、検察は最高裁で争うことを断念した。今回も野村は弁護士として岸を選任し、信楽と森内は今回こそ野村を有罪にするため、捜査本部と連携を進める。

 

行方不明者届の周辺の情報収集し、隠された殺人事件を掘り起こす二係事件、それに従事する信楽と森内が活躍するシリーズの2冊目。今回は10年前に信楽が狙いをつけたが、失態で有罪に出来なかった野村とのリベンジマッチとなる。強引な取り調べをするが、暴力は絶対に使わない信楽に何があったのか。

 

犯人側につく岸弁護士は日野事件を扱うまでは刑事事件の国選弁護人ばかりを引き受ける貧乏弁護士だったが、野村を逆転無罪に導いたことでマスコミの脚光を浴びることになった。現在は冤罪弁護士、正義の弁護士などと呼ばれているが、重箱の隅をつつくような戦術で警察からは嫌われている。

 

中央新聞の記者である藤瀬祐里も岸から記事に難癖をつけられ不快な思いをする。岸はマスコミにも嫌われているのだが、それを利用する狡猾さもあり、そこがより一層憎たらしい。ただ岸自身にも警察に対する思惑もあり、一方的な悪役というわけでもないのが面白い。

 

信楽の暴力による失態の裏側、そして10年前の事件で暗躍していた岸、様々な真相が明らかになるが、一事不再理の原則があるため野村をかつての事件で罪に問うことは出来ない。果たして今回の事件で警察は野村を有罪に出来るのか。露わになっていく野村の真の顔が不気味で良かったな。


次は芦花公園。