殺戮の野獣館 | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者はリチャード・レイモン。

 

いまから約80年前の1903年、野獣館で最初の犠牲者が出た。屋敷の所有者の家族三人が何者かによって殺害されたのだ。その後も犠牲者は増え続け、世間は野獣館にジャック・ザ・リパーのような殺人鬼が潜んでいると噂したが、数少ない生存者の一人であるラリーは否定する。彼は真っ白で無毛のかぎ爪を持った怪物に、自分の友人が食われているところを目撃した、というのだ。いまではその野獣館は観光スポットになっているが、いくつかの部屋は立入禁止で、午後四時以降のツアーは行われていない。ラリーはその野獣館に傭兵を雇って復讐のために舞い戻ってきた。

 

たまにはスプラッターホラーを読もう、と思い立って選んでみた作品。感想サイトで酷評されていたせいでハードルが下がり、思ったよりは面白かった。スプラッターは控えめだが、ツッコミしながら読むB級ホラー小説としてはなかなかの完成度であり、息抜きに楽しむには十分だ。

 

物語としてはあらすじに書いたラリーと傭兵ジャッジによる野獣への復讐と性的異常者の元夫から逃げるダナとその娘サンディの逃避行になっている。娘への暴行で逮捕されたダナの元夫ロイが出所し、それを聞いたダナは娘を連れて逃げ出す。その先が野獣館のあるマルカサ・ポイントである。

 

そのロイは野獣館に潜む野獣よりも非道で、ダナたちを追う道すがら殺人と暴行を繰り返す。ダナはそのロイを恐れながらもジャッジと恋仲になったり、なぜかラリーたちと海へ泳ぎに行ったりなどまったく緊張感が無い。この辺をツッコミながら読むのが面白い。見つかれば殺されるはずなのに呑気なのだ。

 

そして肝心の野獣館の野獣はイマイチ影が薄くなっていく。最後に野獣の正体がわかるところはよかったけど、結局は何も解決しておらず、結局みんな不幸になってお終い。続きがあるようなので館の野獣にももっと活躍の機会があるのだろうか。また息抜きがしたくなったときに続きを読みたい。

 

次は春暮康一。