陰からの一撃 警視庁追跡捜査係12 | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は堂場瞬一。

 

1年前の殺人事件で指名手配されていた男が千葉で事故死した。酔っぱらった状態で車に跳ねられたのだ。追跡捜査係の沖田は気になって知り合いからその事件の情報を集めたが、どう考えても追跡捜査係の出番は無さそうである。しかしその夜、西川の自宅に1枚の手紙が投かんされた。そこには事故死した犯人は冤罪で、詳しい話を聞きたければ明日の夜に一人で晴海ふ頭に来い、と書かれていた。翌日、西川は指定された場所に一人で向かうが、姿を現した情報提供者が襲い掛かってきた。心配してついてきた沖田たちのおかげで一命はとりとめたものの、西川は入院する羽目になってしまう。

 

大好きなシリーズの12冊目。かつて沖田が足を骨折して入院したことはあったが、今回は西川が負傷して入院となる。自席で捜査資料を読み込む安楽椅子探偵タイプの西川だが、さすがに病院では捜査が出来ない。自分のミスなので自分で挽回しようと強引に追跡捜査係まで出向いてくる。

 

沖田も骨折した足で捜査しようとしていたし、気が合わない二人だが意外と同族嫌悪的な部分もあるのだろう。普段は冷静な西川だが熱くなると沖田以上に暴走する、というのは沖田も分かっているが、西川の無茶に呆れる場面もある。50歳を超えたが、まだまだやれる、というところを見せたいのもあるようだ。

 

さて追跡捜査係にはまったく関係ない事件だったのが、西川が襲われたことでその捜査本部に沖田たちも組み込まれることになる。西川を襲ったのは誰なのだろうか。若いときに強引な取り調べをして自供させた石橋という男が出所しているが、西川を襲った実行犯は早々に別人であることが判明する。

 

今回は西川が被害者になったことによって支援課の柿谷晶が彼の支援を担当することになる。何としてでも捜査に参加したい西川と、安全のために彼を保護しておきたい晶。そのやり取りが面白い。晶の強硬さには西川だけでなく沖田も引いており、支援業務に真面目過ぎる晶の真骨頂が拝める。


そんなクロスオーバーは楽しいが、事件は終わってみればわりとしょうもなかった感。ただこんな事件で振り回されることもあるんだろう。西川が襲われたことで調子を崩し、このまま最終巻になるんじゃないかと心配したが、それは杞憂に終わって良かった。50台を迎えた二人の第二部は20巻までは続いてくれ。


次は相場英雄。