機動戦士ガンダムMSイグルー黙示録0079 | 山田屋古書店 幻想郷支店

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物語を必要とするのは不幸な人間だ

作者は林譲治。

 

宇宙歴0079年1月、ジオンは地球上の最大拠点だったオデッサを連邦軍の総攻撃により失い、起死回生を図った連邦軍本拠地ジャブローへの攻撃も失敗に終わった。戦場は地上から宇宙へと移り変わりつつある。第603技術試験隊は新兵器の実地試験を続けていたが、敵の攻撃にさらされることも増えた。それだけ前線が後退し、ジオンが不利になっているのだ。おまけに試験をする新兵器も既存兵器の改造による急造品ばかりで、ジオンの戦力的な窮乏を象徴しているかのようだ。そしてついに試験支援艦ヨーツンヘイムまでもが前線の艦隊に組み込まれる日がやってきた。この物語は、新兵器開発の中で歴史を目撃したジオンの人間たちの記録である。

 

MSイグルーの続編にして完結編。連邦軍はモビルスーツの量産に成功し、圧倒的な物量でジオンに襲い掛かる。ジオンもゲルググというザクの後継機を生み出し対抗するが、その能力を発揮できるだけの熟練パイロットが不足していた。いかにゲルググの性能が優れていても複数の敵が相手では分が悪い。

 

一年戦争という名の通り、1月から始まった戦争は12月の末で終結する。試験隊の面々も自軍が不利であることは重々承知の上で、テストパイロットたちを死地に赴かせねばならない。ジェレミー・マイ技術士官をはじめとしたクルーたちはは可能な限りの整備と戦闘中のフォローをするが、若い兵士たちは次々と散っていく。

 

虚しくない戦争などないが、一年戦争は連邦もジオンもお互いに滅びかねないほどの総力戦で、終盤では一体なんのために戦っているのか全く分からなくなる。戦場での彼らの熱い絆も面白いのだが、あくまでフィクションの話であって、戦争って結局やってもお互いに損するだけだな、と再認識した。

 

次は呉勝浩。