日本で唯一のボン教ゾクチェン伝承者、箱寺孝彦師にチベットのヨガ「トゥンコル」の伝授を受けて来ました。

↓箱寺孝彦師のHP「ボン教の楽しい宝箱」より

このトゥンコルは少し前に話題になった「チベット体操」の基になったものでゾクチェン修行の一部門として行ぜられているものです。

ちなみに「近代ヨガの父」、T.クリシュナマチャリア師はカイラスの麓でチベット僧ラマ・モハン師からヨガを授かったことになってるので、もしかしたらクリシュナマチャリア師も若い頃にトゥンコルを学んでるかも知れませんね。

伝授を受けた個人的な見解としては、かなりユーモラスな動きをしますがそれは通常のハタヨーガよりタイのヨガであるルーシーダットンに近いような気がします。

ただ、ハタ・ヨーガやルーシーダットン にはない独特の発声はトゥンコルの独自のものだと思います。

各アーサナ(ポーズ)の最後に一息つくように「ハァー」と言いながら仰向けに目を開けたまま横になって、少ししたら起き上がってあぐらをかいて「ペッ!」と叫ぶ。

これはサンスクリットのhūṃとphaṭ、つまり「フーン パット」のチベット訛りだと思います。

日本訛りだと「ウン ハッタ」(吽・發吒)、チベット訛りだと「フーン ペッ」ですね。

「hūṃ phaṭ」はよく忿怒尊系のマントラとして使われ色々と訳し方はありますがhūṃは畏怖、phaṭは粉砕とか訳されますので、自らの内なる魔や煩悩を怖れしめ打ち砕くって意味があるのでしょうが、でもこれをマントラとして認識しないで音として、つまり炸裂音としてやる。

唵(おん)などの一字マントラを長く伸ばしてそのバイブレーションを使って意識を集約するのはハタ・ヨーガにもありますが、最後にこの炸裂音で空性や心の本質に入る、或いはとどまる手立てとするのはトゥンコル独自の見解ではないでしょうか。

修験にもこの見解がありますがその場合は「バン」などがよく使われますが。

それからもう一つは目・耳・鼻・口を押さえるハタヨガで言うシャンムキー・ムドラーで首を回したりするのですが、その際はハタヨーガで言うムーラバンダとウッディヤーナバンダの中間のようなバンダとクンバカが軽く使われてましたが、でも良く聞いたらバンダとクンバカは多用されるようです。

あと一点は、そもそも「ツァ ルン・トゥンコル」と言うようにツァはナーディー(脈管)、ルンはプラーナ(風・気息)を表すので、ルン(プラーナ)をティクレ(ビンドゥ、心滴・精髄)に集約してウマ(スシュムナー、中央脈管)を貫かせると言ったクンダリニー、或いは無上瑜伽タントラと直結する行法がサラリと出て来るのが興味深いですが、ハタと同じく無上瑜伽タントラを根拠としてるので当然ですね。

以上のような小難しい理屈は置いておくとしても、トゥンコルはダイエットがどうの身体の柔軟性がどうの体幹を鍛えてどうのと言った最近流行りの商業ヨガ的な単なるエクササイズではなく、ヨガの本来の目的と直結しゾクチェンの見解がダイレクトに出て来るものでした。

とは言え、このトゥンコルを箱寺師が老若男女問わずに誰にでも楽しんで出来るようにオリジナルを損なわない形で伝えてくれていました。

以上、ハタ・ヨーガをやってない方には分かりづらい説明でしたがもっと深く突っ込んで学んで行きたいと思います。


↑私が箱寺孝彦師から受けたゾクチェンの総伝授が書籍化されました。

↑箱寺孝彦師のゾクチェンの求法記。