前回からの続きです。

 

20~30㎞まで

18分48秒-18分38秒

別大国道を走り、大分市街を通る。

そして大分陸上競技場を横目に見る辺りで30㎞となるこの10㎞区間。

 

①やっぱり省エネ

海を眺めるほどの余裕があればいいが、そこまでの余裕はなし。

ただただ、今いる集団の位置取りと前の集団のランナーの動きにフォーカスしながら別大国道を淡々と走行した。

 

②「リトル花形」の出現

一人、また一人と前の集団からランナーが遅れだす。

そして確実に自分たちの集団が追い付き、追い越す。

この時点では脚に余裕があり、一気に追い越してその勢いで前の集団に追いつこうかとも考えた。

 

が、ここで頭の中に「リトル花形」が現れる。

「花形」とは、バスケットボール漫画のスラムダンクで強豪の翔陽高校の中心選手。

湘北にながれを持っていかれそうになり、ベンチスタートだったエース藤間が試合に出ようとする。

しかし、そこで花形が視線を藤間に向けて・・・

 

「まて、藤間!」

「オレを信じろ!!」

 

その後、花形のプレーで再び翔陽がながれを取り戻す。

 

話は別大に戻って、「今、行ってもいいんじゃね?」みたいなノリになっていた自分。

そこで、この花形の「まて、藤間・・・」の件を思いだす

 

その場の変化を読んで冷静に行動することは大切

けど、その場の勢いに任せてぐいぐい行くことは危険。

今の自分はそこまでの走力を培ってきていない。

 

「レース前に自分が立てたプラン通りに走ることで、目標は達成される、信じろ!」

 

リトル花形の囁きで我に戻り、集団の中で同じテンポを刻むことを選択。

この選択が吉と出る。

 

25㎞を過ぎてから集団をリードしていた選手がわずかではあるがスピードアップ。

この流れに乗って自分もわずかなスピードアップ。

 

前の集団から遅れだしたランナーを次々とかわしつつ、前の集団との差が詰まりだす。

 

 

30~35㎞

18分40秒

 

①落ちてきたランナーをかわしてモチベーションアップ

前半無理していた、あるいは何らかのアクシデントがあったランナーを次々と抜き去る。こうなってくるとテンションも上がり、「行けるぞ!」という気持ちになってくる。

 

②32㎞を過ぎたら、完走が見えてきた!

普段の自分の走練習は10㎞ジョグがメイン。

なので32㎞にさしかかったところで「あとは、いつもの10㎞ジョグができたら最低でも完走はできる、安心しろ、大丈夫だ」と自分に言い聞かせる。

そうすることで、トレーニングで踏みこめていない30㎞以上の領域への不安を払拭させる。

 

実際、脚もまだ大丈夫!

 

③問題は確実に下がってきた気温

レース終了後の話になるが、会場付近を歩いていたら、役員をされていた方々の話が耳に入ってきた。「別府から大分に戻ってきたら、寒くなっていた」こんな感じの話をされていた。

「やっぱりか!」と思った。

 

レースに話を戻すと、30㎞前から確実に手先は冷えていて、28㎞でのジェル補給は口でジェルを開封して摂取した。

 

レース前に迷ったが、ランシャツの下にインナーを着たが、この選択は大正解だったと思う。

結果として体幹部は熱を維持したまま最後まで走ることができた。

 

マラソンはレース中にコンディションが何度も変化することを前提にすべし

 

これも今回得た教訓だ。

もちろん、毎回そうではないかもしれない。

けれど、マラソンのように3時間弱の間、町から街へと移動する場合、気候の変化はあるものという前提でいた方が賢明だろう。

 

 

35~40㎞

18分54秒

①再びリトル花形

35㎞過ぎの給水でまさかの出会いが待っていた。

大学時代、共にタスキをつないだ走友が給水係をしていたのだ!

なつかしさとうれしさ、自然と笑みがこぼれる。

 

そして・・・

「まて、ここは淡々と走ることに徹するべきだ!」

再びリトル花形が現れて、レースに徹することを促す

 

が、時すでに遅し。

 

「HISANOさーん!」

うれしさのあまり、声が漏れ出てしまった。

 

この程度ならまだいい。

声をかけられてびっくりしている走友、彼に自分をわかってもらうために

 

「Yamabukiです!」と名を名乗り、大きく手を振った。

 

「おお!?がんばれー」

私を思い出してくれたのか、エールをくれた走友。

 

うれしさがこみ上げる自分。

が、マラソンは甘くなかった。

 

気が付けば集団から少し離れてしまっているではないか!?Σ(゚Д゚)

あわてず、じわじわと追いつこうとするものの、声を出し大きく手を振った代償なのか体がなかなか動かない。

 

「その場の勢いにまかせる」のはやっぱり良くなかった(笑)

 

けど、後悔よりも失笑する自分。

再会できた喜びは変わらないし、エールをもらえたことはスペシャルなこと。

 

「動かない体」は、自分の思い込み。

大丈夫、きっとできる、絶対いけるよ!

 

笑顔をつくり、もう一度立て直す。

 

40km~ゴール

8分22秒

①あと2㎞

近年、箱根駅伝の監督車から「○○、ラスト1㎞だ。お前に残された時間はあと3分だ」みたいな声掛けがされることがあるという。

 

2006年のことだが、初めて全日本実業団陸上に3000mSCで出場したときのことだ。

ハイペースで入り、中盤からスピードダウンしてしまう。

けれど、ラスト1000mにさしかかったとき、

 

「あと1000mしかないのか、もっと走っていたいな~」

 

という気持ちになったことがある。

いつもは苦しくて早くゴールしたいはずなのに、この時だけは

もっと走りたかった

もっと競いたかった

もっとその舞台にいたかった

その瞬間が楽しくてたまらなかった

 

そんなレースは片手でも余るほどしかない。

 

何年ぶりだろうか?

今回の別大も同じような気持ちになっていた。

 

「ラスト2㎞」の表示をみたとき、「あと2㎞しかないのか」そんな気持ちでいる自分がいた。

 

4年前、初マラソンを経験したのも別大、ここ大分の地。

大学時代、一度辞めた陸上競技の楽しさを教えてくれたのもここ大分の地。

 

お世話になった人たちに「別大マラソンを走りに2月になったら大分に帰ってきます!」と告げ、島根に戻り20年か~・・・

 

初マラソンで走ってから、エントリーしても故障でDNS

なかなか立てなかったこの舞台。

今年は今までで最高の準備をして臨むことができた。

 

そんな背景もあって「あと○km」の表示が立ち始めてからは「もっと走っていたい」そんな気持ちになっていた。

 

脚にも来ているし

心拍数もLTゾーンまで上昇してきた

けど今は、もっと走っていたい。

 

歯を食いしばることもなく

「力を振り絞る」でもなく

 

とにかくこの瞬間を味わって、目に焼き付けて、苦しささえも楽しんでゴールを駆け抜けよう

 

そんな気持ちだったと思う

競技場に入ってラスト400m。

 

必死に力を振り絞る周囲のランナーたち。

この人たちと共に走れることが、ただうれしい。

 

肉離れだけはしないようにスピードアップして

 

そんな「ぬるいラストスパート」をかまして笑顔でゴールイン!

 

本当に楽しい42.195㎞だった。

ランナーの皆さん、役員の皆さん、沿道で応援してくれた皆さん

そして、この遠征の時間をくれた職場・家族へ

 

ただ、ただ、感謝。

ありがとうございました。