もう1週間以上経ってしまったけど、3月23日に下北沢の「劇」小劇場にてこわっぱちゃん家公演「nitehi:kedo」を観てきました(ネタバレあり)。
以前、撮影でご一睡させていただいた長尾真奈美さんが出演されている舞台で、お誘いいただき観に行きました。
グリーフという難しいテーマのお話なのですが、とても心に響くいい作品だったなあと思います。
死別だったり、蒸発(?)だったり、植物状態だったり理由はさまざまだけど、大切な人を失ってグリーフになってしまった3人(3家族)のお話で、そこに大学教授なのかな、精神疾患の研究をされている方と、AI生成の研究開発をしている人が絡んで話は進んでいきます。
物語の冒頭では2組の家族しか出てこないのですが、実はAI生成の開発者のうちの1人が妹を失ったことでグリーフになってしまっていたことが途中で明かされます。
このAI生成というもの、ただ声や話し方を「モノマネ」するだけでなく、その人の考えや性格から、それぞれのシチュエーションでその人が言うであろうことを100%再現することを目指して開発されていて、物語の冒頭では80%ぐらいって言ってたかな、教授はそんな程度って言ってたけど、これでもすごいと思うけどね。
まなみんは母と妹と3人暮らし。少し歳が離れた妹で、仕事で家を空けがちな母のかわりに、姉なんだけど母役みたいな感じの立場だったね。母が亡くなる前に妹が引きこもりになってしまって、会いたいなあって言い続けていた母に妹の姿を見せることができないま、母が突然倒れてそのまま帰らぬ人となってしまった。そして葬儀の間も妹を部屋から出すことができず、母に対して強い罪悪感を抱いてしまったことでグリーフになってしまいます。
母の言葉の中にいくつか響いた言葉があるんだけど、その中でもいちばんはやっぱり「いいことも悪いこともきっかけひとつ」みたいなセリフかな(時間が経ちすぎて100%ではないかもですが)。きっかけひとつで人は買われるんだよって、ほんとにそう思います。
もうひとつの家族は長距離ドライバーの父と(おそらく)専業主婦の母と娘の3人暮らし。こちらは母が突然失踪(?)するんだけど、自分が聞き逃しただけかもしれないんだけど、失踪した理由はよくわかんなかったんだよね。あんな一言だったかな、なんかたった一言が理由で家を出てしまうんだけど、その一言がなんだったのか、物語の中で明かされなかったのか自分が聞き逃したのかわからなかったけど、最後まで理由はわかりませんでした。最初はね、もしかしたら亡くなってしまってるんじゃないか、猫みたいに自分の死期を悟って姿を消したんじゃないかって思ったけど全くの見当違いでした(笑)。
そしてもうひとり開発者の方(役名失念)は妹を事故で失います。こちらも最初は事故で亡くなったかと思わせつつ、途中で舞台奥にうっすらと病室に横たわる人影のようなものが布越しに見えることで実はまだ生きているということがわかります。生きてはいるけどいわゆる植物状態、もう話すことはできないんだと。
この開発者、AI生成の開発をしているのも100%を目指しているのも全ては妹と再び話したいからって言う、役柄は人付き合いが苦手そうで悪く言うと人間らしさがない雰囲気なんだけど、それ聞いたらすごく人間らしさがあって素敵だなって思ったね。
開発を進める上でデータとして、妹の親友から話を聞くんだけど、唯一の恋バナとして、あっさり振られた話が出てくるんだけど、ここで放った妹の「誰が玉子焼きやねん」って言葉がすごく印象に残ったのよね。同じセリフを2回言ったって紹介されるんだけどさ、1回目はその場を和ませるため、2回目はきっぱり諦めるための決意みたいなものを感じるよね。きっと1回目は笑いながら、2回目は涙を堪えながら言ったんだろうな。アンケートでいちばん心に残ったセリフもこれを選んだよ。
さて物語は進み、いよいよ「nitehi」(開発していたAI生成のネーミングね)を使うかどうかってところになります。果たして100%に達したのか?
答えはね、もちろんわかりません。でもね、自分は100%なんじゃないかなって、最後のシーン、妹の「死にたい」ってセリフで感じたのね。
おそらく妹は本心ではまだ生きていたいって思ってたと思うの。兄にもすごく感謝してて、でもそんな兄の苦しむ姿とかを理解した上で「死にたい」って言ったと思うんだよね。そして兄もそれが本心じゃないってわかったから「尊厳死は選ばない」ってなったんだと思うんよね。妹の思いやりと兄の愛情がどちらも素敵だったなあ。
全体的に心温まる素敵な物語でした。
全然関係ないけど、久しぶりすぎてブログ書くのにすごく時間かかってしまった(笑)。
終演後に演者と挨拶できました。コロナ以来なかなかできない舞台も多かったので嬉しいですね。久しぶりにまなみんともお話して、またねーって感じで劇場をあとにしました。
こわっぱちゃん家は初めてでしたが、また観てみたいかも。
そんな感じ