今年の夏の選挙戦前、献金問題で週刊新潮が「黒い鳩」と鳩山総理を糾弾するキャンペーン記事の特集を組んだ。たまたま寄ったセブンイレブンで雑誌ラックの前に立つと週刊文春が残1冊で、その下段に週刊新潮が残4冊(各段、5冊収納)。週刊新潮の売れ行きの悪さが目についた。さて衆院選は衆知の通り民主党の圧勝に終わり、新政権が誕生しまもなく1ヶ月になろうとしている。つい最近、気にして、再びセブンイレブンの雑誌ラックを見てみたら、同じく、文春に対して、新潮の売れ残りがひどかった。まだ民主党斬りの方針を貫いておられるようだ。
 文芸春秋では立花隆が新闇将軍小沢のタイトルで寄稿記事。田中角栄で世の中に出してもらったのに、あなたにとって角栄とはと尋ねられて、とくに私の生涯の仕事の中でどうという人物ではないというようなインタビューに答えるテレビのドキュメンタリー番組をかつて見たことがあった。彼の仕事というのは、簡単に言うとアメリカ(CIA)謀略のおこぼれに預かった程度のもの(「田中角栄金脈研究」)。戦後初めて日本独自の歩み方を始めた総理を政治家とカネの問題に矮小化し、以降、田中派=カネ=政治家は汚いのマスコミ図式を作り上げる端緒になった。この男が、05年9月郵政解散総選挙の1ヶ月前にアメリカで日本の影響力の低下と郵政民営化問題についての的確な把握をしておきながら何も糾弾せず実態レポートだけの傍観記事を読んだことがある。要するに小泉構造改革政権を受容した一方で、新闇将軍小沢研究なのかと、失笑した。何かにつけ他人に対し頭が悪いが口癖の人間だが、彼については頭はともかく、ひとこと断言できるのは、この国にとって何も役にたたない人物だということ。そう切り捨てていいのではないか。たとえば、05年の彼の書いた記事の中に「日本の戦後の経済的成功を支えた国家体制=国家資本主義体制(1940年体制)の根幹部分は、世界最大の銀行たる郵貯などがかき集めた郵政マネーを国家が中心となって公共事業に投資して回転させていくという行為それ自体によって日本経済の根幹を支えていくという国家中心の資本主義体制にあったわけだ。日本の経済力をつぶそうと思ったら、この根幹部分をつぶすほかないと見抜いたアメリカのプレッシャーと願望と、たまたま郵政省と郵政族に深い恨みを持った、ちょっと頭の弱いポピュリスト政治家(小泉首相のこと)の望みが一致してはじまったのが、小泉改革の4年間とその頂点としての郵政民営化大騒動だったということではないのか」
 この点に疑問を挟む余地は無い。しかし、じゃあ、このままならアメリカの意のままに、日本の戦後経済復興の力の根幹部分がつぶされるわけだが、それでいいのかどうか。またこのままなら小泉恐慌が起こることも予測し、実際そのとおりになったわけでその予知力には敬服するけれども、しかしだからといって小泉改革にノーを突きつけたわけではない。日本経済の根幹部分を潰されること以上に政治家とカネの問題が重要だとは、とても思えない。というより政治とカネの問題じゃなくて日本のためにどんな仕事をしたかが政治家を計る尺度じゃないのか。
 いま、新たに、「新闇将軍小沢研究~師田中角栄を超えたか」とリードはなっているが、じゃあ、あんた、どうすればいいと思っているんだ? 
 以上、少し過激なものの言い方をしてしまったが、その背景のひとつである7月16日の記事を最後に再掲しておきたい。





「立花隆が05年解散総選挙の1ヶ月前に発表した郵政解散についての論評」



第38回 海外メディアが伝えた小泉・郵政解散劇の評判

2005年8月11日

3日前から、NHKの取材のつづきで、米ロサンゼルスに来ている。小泉首相が解散総選挙の決定を下した日だ。

日本ではもちろんトップニュースになったにちがいないが、アメリカでは、ほとんど無視された。

CNNのニュースの一項目にはなったが、1分はなかった。40秒程度の扱いだった(半日くらいしたら2分30秒くらいの扱いになった)。「USA TODAY」は、完全に無視して、1行も報じなかった。ロスの現地紙「Los Angeles Times」紙は、1面ではなくて、8面でニ段組の記事で報じたが、これはロスに日本人が多く住んでおり、日本人の関心が高いからだろう。しかし、その辺の一般のアメリカ人にとっては、日本の政治など全く関心がないのである。

アメリカにおいて日本の存在感が大きかったバブル時代ですら、日本の存在感は、あくまで経済大国としての存在感(ジャパンバッシングが起きていた)で、政治大国、あるいは文化大国としての存在感ではなかった。バブル崩壊以降は、「ジャパンバッシング」(日本たたき)の時代が終わって、「ジャパンパッシング」(日本通りすぎ)の時代になってしまったとよくいわれるが、新聞の紙面ひとつとってみても、日本は本当に通りすぎてしまわれるような、存在感のうすい国になってしまったのである。

< 途中 略 >

 米国の関心事は350兆円におよぶ郵政マネー

「Los Angeles Times」の記事にしても、あるいは、CNNの長めのニュースにしても郵政民営化の説明で強調されるのはただ一点、郵貯が世界最大の貯蓄銀行で、それが民営化されたら、350兆円におよぶ郵政マネー(簡保も含めて)を持つ世界最大の銀行が生まれるということである。アメリカの関心は(政府も民間も)郵政民営化の問題で関心があるのは、この一点だけなのである。

郵政民営化の問題で、日本のメディアで、あるいは日本の議会で展開されているようなあれこれの諸問題には誰一人関心がない。

そんなことはどうでもいいことだと思っているのだ。郵政公社が(ひいては政府が)かかえこんでいた、そのとてつもない量の資金を、早くグローバルな金融資本市場に放り出させ、一刻も早く国際金融資本家たちが互いにキバをむき出しあってその取り合いをするにまかせよということなのだ。

すでに幾つかの雑誌メディアが指摘していることだが、一般国民にはほとんど理解されていない、郵政民営化問題の最大の背景は、それが一貫してアメリカ政府が毎年、日本政府に突きつけてくる改革要求リストのトップにあるということである。

郵政民営化になぜ小泉首相があれほどこだわるのか。その原点を小泉首相の個人的な独特の政策へのこだわり(小泉首相の趣味とまでいう人がいる)に求める向きも多いが(それはある程度は当たっている)、それ以上にはるかに重要なのが、アメリカのプレッシャーである。

 日本の政治を動かす“アメリカの意志”

日本の戦後政治を支配してきた権力者たちは、権力中枢に近い人ほど、アメリカの意志が日本の政治を動かす陰の最大の動因となってきたことをよく知っている。

もう30年ほど前になるが(大平内閣の頃だったと記憶する)、あるとき、日本のトップ官僚の最右翼的立場にある人と、くだけた懇談をする場に居合わせたことがある。はじめその人は、私が「角栄研究」の筆者と知って警戒心をもって私に接していたが、座がかなりくだけてきたところで、いきなり、私に向き直って、「立花さん、あなたは、日本の政治(政策)を動かしているパワーの中で最大のものは何だと思いますか?」
と正面きった質問をぶつけてきた。私は自民党の大派閥のボスたち、財界、圧力団体、イデオロギー的指導者、大マスコミなど、一般にその問いに対する答えと考えられているものをいろいろならべたが、彼はニコニコしながら、その答えのすべてに頭をふり、その後で、スパッと、
「アメリカの意志ですよ」
といった。
「いかに政治力があろうと、アメリカの意志に反することをする可能性がある政治家は、絶対に総理大臣になれません」
といって、その実例を説得力ある形であげてみせた。そして、日本の政治・経済・外交政策が一貫していかにアメリカの意志に従う形で展開されてきたかを例証してみせた。その後ずーっとたってから(20年以上たってから)、ほとんど同じような話を、外務省トップエリート出身の有力政治家から聞かされた。

アメリカの意志が、日本の政治が岐路に立ったときの最大の決定的要因だなどというのは、まるで共産党のスローガン「日本はアメリカ帝国主義の従属国家」の焼き直しみたいだったので、私があっけにとられつつ彼の所説を聞いていた。そのうち共産党の唱える抽象的で図式的な従属国家論とはまるでちがう、リアリティに富んだ日本の従属国家論を例証付きで次々に聞かされて、私はだんだん納得させられていった。

 日本の国力、経済力は根こそぎ削がれることに

そういうことがあってから、日本という国家の過去を見直し、日本国の現在を取りまく諸要因の分析をしながら、日本国の未来をうかがうために何より重要な視点が、アメリカ国と日本国の国家的角逐(かくちく)が1930年代から一貫してつづいているという視点である。その視点から見るなら太平洋戦争(わずか4年間しかつづかなかった)などというものは、歴史の一つのエピソードにすぎないと考えることが重要である。

むしろそのエピソードを中にはさみつつ、両国の国家的角逐史がいまも姿を変えて激しくつづいていると考えると、世界史の構図の中での日本国の運命がより良く見えてくる。そんな話を、私は「イラク戦争 日本の運命 小泉の運命」(講談社)という本に書いた。

 話が長くなるから以下、簡単に書けば…

話が長くなるから以下、簡単に書けば、日本国とアメリカの角逐70年史の前半(?1945)は、日本が自暴自棄の熱い戦争に追いこまれて完敗したの一言で総括できる。

しかし、日本は意外にも早々と戦列に復帰した。その背景に戦争中に理工系学生がすべて動員されずに温存されたことが、日本を工業国家として再生させる基盤となったということは、第36回の記事にリンクされている「文春」9月号の特設ページに詳しい。

しかし、その後にひきついだ第2ラウンドの経済戦争という戦争において、日本はアメリカに連戦連勝し(はじめは勝たせてもらった)、あわやアメリカをノックダウンしかけるところまでいった。そのアメリカが反撃し、日本はバブル経済を徹底的につぶされ、ほとんど破産しかけながら、なんとか踏みこたえているというのが現状ということにある。

その流れの中にあって小泉改革とは何か。

日本の戦後の経済的成功を支えた国家体制=国家資本主義体制(1940年体制)の根幹部分は、世界最大の銀行たる郵貯などがかき集めた郵政マネーを国家が中心となって公共事業に投資して回転させていくという行為それ自体によって日本経済の根幹を支えていくという国家中心の資本主義体制にあったわけだ。

日本の経済力をつぶそうと思ったら、この根幹部分をつぶすほかないと見抜いたアメリカのプレッシャーと願望と、たまたま郵政省と郵政族に深い恨みを持った、ちょっと頭の弱いポピュリスト政治家(小泉首相のこと)の望みが一致してはじまったのが、小泉改革の4年間とその頂点としての郵政民営化大騒動だったということではないのか。

 建設者としての顔が見えない破壊者・小泉純一郎

確かに小泉改革には大いに評価すべき側面もある。

日米戦争第2ラウンドの日本の成功を支えた国家資本主義体制は、その本質的部分に多くの腐敗の芽を蔵しており、政界、官界、経済界、各地の地方エゴの代表者たち、各界利益代表圧力団体が、そろって国家システムから甘い汁を吸いつづけ、腐臭をはなつ人々が日本のエリート層の中枢にたくさんいた。

その体制の中核となっていた自民党に対して「自民党をぶっつぶす」という小泉首相の改革のスローガンには、なるほど国民の共感を呼ぶ部分が少くなかった。

しかし、小泉首相は、腐敗しながらも、この国家を基本的に繁栄させてきたこの国のシステムをぶっこわしたあと、それに代わるどのようなシステムを構築しようとしているのか、それがまるで見えてこない。

なるほど破壊者としての小泉首相はそれなりにすぐれたパフォーマンスを見せてきたが、破壊のあとに必要となる建設者としての小泉首相の姿も、ビジョンもまるで見えてこない。

 破壊のあとに何をするのか…

破壊のあとに何をするのかという最も大切なビジョンとして小泉首相がとなえつづけていることは、「民間にできることは民間に」というスローガン以外、何も聞こえてこない。

しかし、民間にまかせておいたら破綻することが必然のことは山のようにある。どうしても官がやらねばならないことも山のようにある。民間にまかせることで合理化がはかられることもあるが、民間にまかせることで、あらわれてくるもっと巨大な腐敗、もっと巨大な不正もヤマのようにある。

実は公的資本を投じることによって経済の相当部分は回転しており、その投資が一定水準以下におちこむと経済は有効需要の不足からデフレ現象がひきおこされ、ついには恐慌にいたるというのは、経済の常識である。ここ数年つづいているデフレの背景にはそれが基本的にある。つまり、これは小恐慌なのである。おそらくあと何年か経つと、小泉時代の目を覆わしめる不景気は、「平成恐慌」ないし「小泉恐慌」という名で呼ばれることになるだろう。

資金量350兆円の世界最大の銀行をつぶした後に残るもの
小泉首相のやってきたことは、銀行の不良債権の処理の加速化などという外科手術だけで、手術が終わったらあとは病人も放ったらかしにして、あとは自力回復を祈るのみという無責任な医者と同じである。

郵政マネーの回転で動かしてきた日本経済の相当部分を小泉首相は郵政システムぶちこわしのあとどうしようというのか。

資金量350兆円の世界最大の銀行をつぶし、その回転力に頼っていた日本経済の一定部分から突っかえ棒を引き抜くからには、そのあとどのようなシステムに改変し、その過渡期をどのように混乱なしに切り抜けていくのか。

少なくもそのためのベーシックなアイデアが出されていなければならないはずなのに、何もない。

それなしでは、小泉首相はただ、破壊のための破壊に狂奔する日本国史上最大の国家システム破壊者といわれても仕方ないだろう。

郵政改革PRのために、国と特別契約を結んだ竹中平蔵郵政民営化担当大臣の知人が経営するPR会社が提出したPR企画書の中に、郵政改革PRは、老人、女性など、“ちょっとIQの低い人々中心に進める”という一文があったのは有名な話だ(国会でも取り上げられた)。

解散総選挙の決定が下ったあとで、小泉首相の支持率、郵政法案への支持率が上がったと聞いて、私はおどろいている。

新しく小泉首相支持に回った人々にいっておきたいことは、国民の多くは熟考の上で小泉首相の支持にまわったのかもしれないが、その支持率アップの数字を見て、高笑いしているに違いない竹中大臣とその盟友のPR会社幹部がいるということをお忘れなくということだ。

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<山の中コメント>
 すべてが当たってるわけではないが当時ここまで知っていたのなら、なぜもっと社会問題化しない?角栄金脈研究で世の中に出てきた貴方じゃないか。
 しかし、思うに貴方の仕事も対日圧力の大きな裏の動きのパーツにすぎなかった、というのが、私の考えです。田中角栄を失脚させた張本人は米国とその息がかかった日本検察だったのでしょうから。角栄は敗戦後、初めて日本の独り歩きを試みた政治家だったのですが、デビッド・ロックフェラーの怒りを買い、謀略に巻き込まれ政治生命を閉じました(闇将軍と言われた時代がありフィクサー的役割で政界への影響力を持ち続けていたのですが、派閥を竹下登に乗っ取られ、晩年は顔面神経痛になったので、あれが余計、米国に逆らったらああなるの恐怖のシンボルイメージになってしまったきらいがあります)。あれ以来、日本の政治家は役人そして役人の上に君臨する米国に操作される操り人形に成り下がりました(角栄以降は、ロンヤス関係と浮かれた政界の風見鶏こと中曽根元総理が米国従属の嚆矢(こうし)だったという説が有力)。
 田中角栄研究の仕事なんか僕のやった中でたいしたことじゃないよとコメントしている立花をテレビで見たことがありますが、それはないだろうと思ったことがありました。堀田なんとか元東京地検のエースだとか立花だとかが英雄扱いされ、田中派=公共工事=金脈=悪のようなマスコミ方程式を作り上げたけれど、立花の仕事も、役人(検察)>政治家の力関係を作る検察の仕事のお手伝い程度に過ぎなかったんじゃないでしょうか。ある意味、日本の対米従属化に結果的には手を貸したといってもいいと思っています。その彼が、郵政解散総選挙を前にして、小泉の乱暴な政治手法に脅威の評論を書いているのは、ちょっと複雑な気分になりますね。というか、田中で政権転覆させるきっかけ作ったぐらいなんだから、それだけのネタもってたんなら、1ヶ月も時間がまだあったのに、なんで国益を最大優先させて、郵政解散総選挙の真実を国民にもっと訴えなかったのかと問いたい。
 といってもまあ、大マスコミあってこその評論家だから、しょうがないのでしょう(世の中の役に立ってない、っちゅうに・・)、角栄研究以降、目だった仕事無いけれど、やってきた仕事の意味も、しょせんその程度のものだったということでしょう。
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