-これからの都市観光のあり方について-
コロナ禍から社会経済活動の正常化が進むなか、銀座や築地、日本橋などの繁華街には外国人を含む多くの人が訪れ、賑わいを取り戻しつつあるように感じています。コロナ禍では、外出自粛や行動制限、入国制限などにより2010年から過去最高を更新し続けていたインバウンドが大きく減少しました。国内外の旅行需要が激減し、ホテルなどの観光業のみならず、飲食や小売りなどの関連産業に与えた影響は甚大で、観光がいかに地域経済と雇用等を支えていたかを改めて認識しました。
観光庁は、第4次観光立国推進基本計画の目標として、2025年に訪日客数の過去最多更新を目指しています。一方、都市部への客足偏在や観光公害といったオーバーツーリズムの課題を克服して観光立国の再生を目指す方針です。また、観光客数のみにも拘わらず、観光客一人当たりの宿泊や消費額を高める「観光業の量から質への転換」を掲げています。さらに、観光と環境の両立を目指すサスティナブルツーリズムの目標を新設しています。観光庁はオーバーツーリズム等への対応をとるべく自治体が持続可能な観光地マネジメントを行うことができるように、国際基準に準拠した「日本版持続可能な観光ガイドライン」を策定しています。これに基づき、東京都は観光施策を検討中です。すでに、京都市及び京都市観光協会は、文化・習慣の違いによるマナー違反などの観光課題を解消するために京都観光行動基準「京都観光モラル」を策定しています。
これからの都市観光について、
1、サスティナブルツーリズム(持続可能な観光)
2、レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)
3、デジタルトランスフォーメーション(DX)の3つの視点が重要となります。
1、サスティナブルツーリズム(持続可能な観光)
サスティナブルツーリズムとは、観光地本来の姿を持続的に保つことができるように、観光地の開発やサービスのあり方を見定め旅行の設定を行うことです。地域の自然や文化を活かした観光地づくりであり、環境悪化要素としての観光ではなく、観光地に住む住民と観光客が相互に潤うことが重要との考え方です。地域環境や文化の維持しながら観光業を活性化させ、住民の暮らしを良くしていくことを目指すものです。
青森の伝統行事「ねぶた祭り」では、観覧+食事+ねぶた師による解説・懇談という高付加価値付き特別観覧席(1日1団体限定100万円)を販売し、その利益を全額地域経済やまつりの担い手に還元することで持続可能な循環モデルを創出しています。高額ながら観光客の満足度は高く、住民のシビックプライドにもつながっています。
2、レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)
レスポンシブルツーリズムとは、観光客もツーリズムを構成する要素であると捉え、観光客が意識や行動に責任をもつことで、より良い観光地の形成を行っていこうという考え方です。観光客の行動が地域や環境への負荷を与えてしまうかもしれないことを認識し、自律した行動を実践していく、これからの観光のかたちです。
ハワイでは、海のサンゴを守るためにビーチでの日焼け止めの使用を条例で禁止しました。観光と環境のあり方を問い、観光地が観光客を選ぶ時代が到来しています。
3、デジタルトランスフォーメーション(DX)
コロナを機に、観光客の意識の変化や観光業界のデジタル化が進行し、デジタルありきのマーケティング戦略が基本となっています。今後、旅行が回復してくることを見据えて、国内旅行者・訪日外国人旅行者ともに受入体制を整えておく必要があります。
令和5年度予算では、地域の営業活動であるシティプロモーションが新規事業化されました。最新トレンドに基づく最適なPR手法の検討や歴史・文化など地域資源の再整理・再発見するために、コンサルタント会社に委託します。地域資源を国内外に戦略的・効果的に発信する広報活動を展開し、インバウンド需要の拡大とともに、住み・働く人のまちへの誇りや愛着心のさらなる醸成を図ります。
中央区では、持続可能な都市基盤を整備するための様々な構想や計画が進展しています。東京駅前の地下バスターミナルの整備をはじめ、首都高日本橋の地下化と日本橋川沿い5地区のまちづくり、築地市場跡地の再開発、築地川アメニティ整備構想とKK線再生方針、舟運・BRT・地下鉄新線の整備などの都市基盤整備は将来的には都市観光のプラス要素となるものです。持続可能なまちづくりは持続可能な都市観光につながるものであり、その逆も然りです。しかし、10年以上にわたる工事期間は都市観光にとって大きなマイナス要素となります。このマイナス要素をプラス要素に変えていく取り組みが必要です。そこで、工事現場の仮囲いを活用したプロジェクションマッピング、観光情報の掲載、中央区の歴史・文化の紹介などを提案しています。また、コロナ後の観光戦略を再構築するために「中央区観光振興ビジョン2012」の見直しを求めています。まちとひとそのものを観光資源と捉え、住む人と訪れる人がともに中央区の魅力を創り発信し続ける新しい観光のあり方を望みます。まちとまちをつなぎ回遊性を高め、まちとひとを結び繰り返し訪れてもらう、「まちなみ、いとなみ、おもてなし」が結びついた新しい都市観光を期待します。
▽中央区観光振興ビジョン2012
https://www.city.chuo.lg.jp/documents/4131/chuotourismvision2012.pdf
▽観光情報センターのご案内
https://centraltokyo-tourism.com/ja-jp/travel_info/learn
https://www.city.chuo.lg.jp/a0016/bunkakankou/kankoujouhou/kankoujouhou_center.html
▽中央区観光プロモーション映像
https://www.city.chuo.lg.jp/a0016/bunkakankou/kankoujouhou/promotionmovie.html