“物語る絵画” 根津美術館 | やまちゃん1のブログ

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根津美術館は、都心にありながら日本美術と庭園を楽しめることから来日客の比率が最も高い美術館だと思う。隈研吾設計の建物も人気のようです。
今回の”物語る絵画“も、「涅槃図・源氏絵・舞の本・・・」という地味なテーマながら、インバウンドのお客様で活況でした。

(展覧会は一切撮影禁止のため、写真はネット画像を借用しました)


釈迦八相図 鎌倉時代13世紀

釈迦の八つの重大時相を描いている。下天・入胎・誕生・出家・降魔・成道・転法輪・涅槃を表す。



仏涅槃図 行有・専有筆 南北朝時代 康永4年(1345)

仏涅槃図は、釈迦が沙羅双樹の木の下で亡くなったときの情景を表す。中央に「頭北面西」で横たわる釈迦。弟子や諸仏、動物が周りで嘆き悲しむ。右上方から、釈迦の生母“摩耶夫人”(まやぶにん)が忉利天から降りてきている。単眼鏡で一人一人眺めると、極細の線描で豊かな色彩で個性豊かな人物や動物が描かれている。釈迦の足を撫でる老女”スパッダラ“など細密な描写がすばらしい。
作者の行有・専有親子は興福寺に所属する絵仏師。数ある『仏涅槃図』の中でも標準作となる優品。



絵過去未来因果経 第四巻
(絵)慶忍・聖衆丸筆 (写経)良盛筆
鎌倉時代 建長6年(1254)



源氏物語図屏風 6曲1双
桃山〜江戸時代 17世紀



浮舟図屏風 6曲1隻 江戸時代
17世紀

宇治十帖浮舟の巻から、匂宮が浮舟を連れて宇治川を渡る場面。浮舟は薫が宇治に住まわせていたが、匂宮は薫になりすまして浮舟と契る。後に、浮舟は二人の男の間で苦悩し入水する。
長谷川派の作品らしいが、宗達の源氏絵を本にしている。





妖怪退治図屏風 伝岩佐又兵衛
8曲1隻 江戸時代17世紀

能の「田村」で語られる坂上田村麻呂の鬼退治の場面で。岩佐又兵衛自身の作風とは異なるが、岩佐又兵衛工房作と推定されるらしい。
極彩色の鬼が逃げ回る様子が面白い。


今回一番印象に残ったのは
2階 “盛夏の茶事” の床の間に掛っていた断簡


岡寺切(順集断簡) 藤原定信筆
平安時代 12世紀


根津美術館のほの暗い茶室空間の中で、盛夏の茶事にふさわしい青井戸の茶碗、備前緋襷の水指はたっぷり水で濡らす、そして床の間には表装された三十六歌仙の西本願寺本三十六人家集の「順集(糟色紙・岡寺切)」。「とこなつの つゆうちはらふよいごとに くさのかうつる わがたもとかな」と、涼やかな情景を詠んでいます。筆者は右形上がりが特徴の藤原定信、濃い藍色の染紙に散らした金銀砂子が、夜空に瞬く星星か、露を含んだ草むらに乱舞する蛍を思わせる。
藤原定信(1088〜1156)は、藤原行成を祖とする能書の家系に生まれた平安後期の廷臣・書家。


一点一点じっくり鑑賞したい展覧会

★★★★☆