彼女の原作がフランス映画になっている事を知り、興味を覚えた。
外国映画になった作品は、最近だと、カズオイシグロ(英国籍)の「私をはなさないで」、村上春樹の「ノルウェーの森」がある。
どちらも、海外での評価が高いことは知られている。
小川洋子は、芥川賞作家であるが、彼らほど評価が高いとはあまり耳にしたことはない。
私も、彼女の小説を読んだことはなかった。
ここ20年の女性作家では、山田詠美、吉本ばなな、が最高と思っていましたが、小川洋子も追加します。
さて、「薬指の標本」がフランス映画になり得たのは、エロチシズムが一番でしょう。それも、マゾヒズムのイマージュがていねいに描かれている点ではないだろうか。「O嬢の物語」を彷彿させる。
「わたし」が、標本士の視線に封じ込められながら、部屋中に散乱した、数えきれない和文タイプの活字を、一個一個、這いつくばって探し、朝を迎えるまで、活字boxにセットするシーン。
和文タイプ!?
本が書かれた時は、すでにワープロが普及していたが、標本士の靴を舐めるイマージュに、和文タイプの活字が必要だったのではないだろうか。
とすると、重要なイマージュをつなげて、プロットを作るという映画的な創造が働いていないだろうか。
ちなみに、唯一名前がある弟子丸氏は、フランスで高名な日本人の禅マスター、弟子丸泰仙からであろう。
最初から、フランスでの映画化を予見していたかのようである。
「六角形の小部屋」も傑作である。