岸和田の死亡ひき逃げ会社員に有罪判決 | 山岸久朗オフィシャルブログ「正義は我にあり!!」Powered by Ameba

最下部に引用したNHKの記事の事件について。

あまりにも釈然としないので事実をお報せしたい。

 

私が、被害者遺族の代理人弁護士として、被告人の刑事裁判に被害者参加しておりました。事件が起きたのは平成26年5月3日。被告人が、検察官の公訴事実についてほぼ全面的に争ったので、その公判前整理手続にずいぶんと時間を要しました。しかし、その内容を見ていると、被害者の立場からは、時間がかかる割りに実のある議論がなされていないように感じました。被害者には、公判前成立手続には参加権が認められておらず、遺族からすれば無駄な時間がダラダラと過ぎていくことにずいぶんと歯がゆい思いをしました。

 

公判自体は、2年以上も経過した平成28年9月12日にようやく始まりました。被害者のご家族は、可能な限り全公判に出廷しました。そして、被害者意見陳述で率直な思いを裁判にぶつけました。私は、公判において、被告人に対する尋問や、被害者参加代理人として熱く意見陳述しました。裁判長が、被告人に、『自分が轢いた可能性を否定していない以上、遺族に謝罪すべきではないのか。』とまで言ってくれましたが、被告人は頑として遺族に謝罪しませんでした。否認なので、筋としてはそうなのかもしれませんが・・・。結果、平成29年1月23日、大阪地方裁判所岸和田支部において、有罪判決が下りました。遺族側代理人としてはほっとしました。

 

ただ、その量刑については納得していません。懲役3年はともかく、執行猶予5年がついたからです。

 

今回の判決によると、被告人は、現場から逃走し、翌々日の5日に逮捕されています。2日経過したため、飲酒検知が出ず、公訴事実としては、人を轢いたことと、逃げたことだけでした。つまり、飲酒運転の事実は公訴から外されたのです。しかし、今回の地裁判決では、理由中で、『飲酒の発覚をおそれて逃走した可能性が高く、犯情は悪質であり、自己保身から被害者を現場に放置した身勝手な犯行は強い非難に値する』(原文ママ)と、飲酒の事実についてまで踏み込んで言及してくれました。(この、飲酒をしたか否かについても、4頁にわたって丁寧に事実を拾って認定してくれました)

 

しかし、飲酒運転で人を轢いて、その場で逮捕されていれば、確実に実刑判決になったはずです。それを、逃走し、飲酒の上逃走した可能性が高いとまで判決中で認定されたにもかかわらず、執行猶予つき判決。刑務所に行かず、社会内での更正が許されるのです。これでは、酒を飲んで人を轢いても、逃げたほうが得という結論になってしまわないか。私は非常に恐ろしい。

 

しかも、大阪地検岸和田支部は、執行猶予に納得し、遺族の意向を汲まず、控訴をしないという結論を下しました。被害者参加人には控訴権はないので、検察庁まで直談判に行きましたが、控訴権を持つ検察官が控訴しないという結論ありきで、何を言っても聞く耳を持ちませんでしたので、いかんともしようがありませんでした。検察官は控訴しない理由についてこう言いました、「自分たちも納得はいってないが、反面、公益の代表者でもある。」と。飲酒して人を轢いた人間を執行猶予にするのが公益の代表者なのだろうか?と釈然としません。

 

その反面、被告人は、有罪となったことを不服として控訴しました。これにより、この事件は今後、確定せず、高裁にはかかります(ですので、この投稿は、地裁判決が未確定であることが前提です)。しかし、「不利益変更禁止原則」というものがあり、これからの高裁は、地裁判決を、被告人に有利にする方向のみの審理となります(棄却という現状維持の結論もありますが)。検察官が控訴してくれていれば、まだ実刑判決に望みをかけることができたのですが・・・

 

法改正が必要だと感じます。「逃げ得」を許しては絶対にいけません。

 

しかし、今は、自分にできることをします。控訴審もがんばりますパンチ!

 

<以下、NHKのホームページから抜粋>

 

3日、大阪・岸和田市で、29歳の男性が車にひき逃げされて死亡した事件で、警察は、5日未明、27歳の会社員の男を逮捕しました。男は容疑を否認しているということです。

 

逮捕されたのは、大阪・岸和田市の会社員、佐藤直樹容疑者(27)です。3日午前0時すぎ、岸和田市大手町の市道で、近くに住む寺田一貴さん(29)が車にはねられ、その後、死亡しました。警察は、ひき逃げ事件として捜査していました。

 

警察によりますと、現場近くで目撃された不審な車と佐藤容疑者の乗用車がよく似ていたことから、車を詳しく調べた結果、事故のあとや血痕がついていたことがわかり、5日未明、佐藤容疑者を、ひき逃げと自動車運転過失致死の疑いで逮捕しました。

 

警察の調べに対して、佐藤容疑者は、「現場を通ったときに物音がして、何かをひいたと思ったが、人だとは思わなかった」と供述し、容疑を否認しているということです。警察が当時の状況を詳しく調べています。