降格(労働法) | 山岸久朗オフィシャルブログ「正義は我にあり!!」Powered by Ameba

「降格」には2種類あります。


1つは、懲戒処分としての降格。


1つは、人事権による役職・職位の降格。


懲戒処分としての降格の場合には、懲戒処分としての法規制を受けるので、就業規則の根拠規定と、それへの該当性が必要であり、また処分の相当性につき懲戒権濫用法理による吟味を受けます。


(懲戒は、規律違反の種類・程度その他の事情に照らして相当なものでなければなりません。使用者の懲戒権の行使も、客観的に合理的な理由を欠き、または社会通念上相当として是認しえない場合には懲戒権の濫用として無効となります)


これに対して、営業所長を営業所の成績不振を理由に営業社員に降格する場合や、勤務成績不良を理由として部長を一般職へ降格する場合のように、一定の役職を解く降格については、裁判例は、就業規則に根拠規定がなくても人事権の行使として裁量的判断により可能である、としています。


ここで裁判例の言う人事権とは、労働者を企業組織の中で位置づけ、その役割を定める権限であり、労働者を特定の職務やポストのために雇い入れるのではなく、職業能力の発展に応じて諸種の職務やポストに配置していく長期雇用システムにおいては、労働契約上当然に使用者の権限として予定されているものです。


しかしながら、このような人事権も、当該労働者の職種に関する労働契約の合意の大枠のなかで行使できるものです。したがって、職種が一定レベルのものに限定された労働者を不適格性を理由により低いレベルのものに引き下げる降格は、一方的措置としてはなし得ません。


また、労働契約の枠内の降格であっても、権利濫用法理の規制には服するのであり、相当な理由のない降格で、賃金が相当程度下がるなど本人の不利益も大きいという場合には、人事権の濫用となります。


<以上、菅野和夫著「労働法」より抜粋・改変>