その日のために


仕事の行き帰り、片道40キロほどのドライブをするのだが、
そこかしこ目に飛び込むのは、今を盛りと咲き誇る桜花の繚乱である。
花開く、その凄まじいほどの爆発力には舌を巻く。
わずか一週間ばかり、
ここぞとばかりに咲き誇って散るいさぎよさには感服するのだが、
忘れてならないのは、その日のために、残り360日ほどの、
途方もない時間のすべてをかけて、人知れず開花準備に余念がない。
そのことこそ、人は学ぶべきだろう。

雨も降りそうで、散るのは、あと数日と思えたので、
早仕舞いできた仕事帰りの道すがら、思い立って何箇所かの桜道に車を停めた。
折りしも、小さな子どもさんを連れた若いお母さんたちと出逢えて、
何とも微笑ましい心地になる。
お願いをして撮影許可をもらった。

この季節、桜を見ると、きまって思い出すのが亡くなった父のことである。
私が35歳のときのことだ。
入院先の医師から呼び出され、肺癌ステージ4、余命数ヶ月と告げられた。
折りしも、巷は至るところ桜の花が満開だった。
病室の父のもとへ行ったとき、私は、
「今年は桜の花が見れないね」と、つい何気無く言ってしまった。
すると、父がすぐさま返した。
「来年また見れるから今年はいいよ」
それ以上、私は何も言えなかった。
そして、父は二度と桜を見ることなく七月に天に昇った。

生涯、桜の歌を詠み続けた西行が亡き母を思い詠んだ歌がある。

散る花は また来ん春も 咲きぬべし 別れはいつか 巡りあふべき
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今を抱きしめて/仙道敦子・吉田栄作/1994

 

 

 

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『さよならだんだんまた明日』をリリースされました。
とても素敵な歌ですので、是非聴いてあげて下さい。

不肖私めの撮影した写真も少しだけ入れてありますので、よろしくです。

 

「だんだん」は、出雲地方独特の方言で、ありがとうの意です。

 

 

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