この日をつかめ

引っ越しで段ボールに詰め込んだ書籍を新居の書棚に並べ整理していると、
手に取る本の題名のひとつひとつに遠い記憶が甦る。
しかと脳裏に記憶しているものもあれば、
読んだかどうかさえ定かでないあやふやなものもある。
そんな中、一冊の本の題名に、ふと手が止まった。
「この日をつかめ」・・・
アメリカのノーベル賞作家、ソール・ベローの代表作であるが、
今では殆ど読まれることもなく、すでに絶版となってしまっているようである。

人生に挫折し、妻とも離婚、仕事もなく、お金もなく、
様々な悩みや困難がのしかかってきて苦悩する主人公のあてのない日々・・・
そんな時、ある男の言葉が胸に響く。

「精神的な報酬こそぼくの求めるものなんだ。
人びとを『いま・ここ』という時へ導き入れることができればいい。
本当の世界、つまり現在という瞬間へ。
過去はもう役にはたたない。未来は不安でいっぱいだ。
ただ現在だけが『いま・ここ』だけが実在のものなんだよ。
この時を・・・この日をつかめ」


題名のインパクトが強烈だ。
「この日をつかめ」という言葉は、
古代ローマの詩人、ホラティウスの「抒情詩集」から引用されたとされる。
この書を手にしてから、はや五十年あまりの歳月を数え、
今改めてそのタイトルに虚を突かれ、
当時はその言葉のインパクトにだけ溺れていたものだが、
今思うのは、この日をつかむには、
さて、どういう行動をすればいいのかと問う自分の声である。
すると、主人公に助言した男が、さらにこんな言葉を投げかけている。

「この日をつかむには、取り敢えず、
目の前にいる人に精いっぱい尽くしてみよう」


当時見逃していただけに、今にして思えば眼から鱗である。
ホラティウスの抒情詩集にはこんな言葉も添えられる。

この日を摘め
時は飛ぶ
今日という日の花を摘め


そんな思いを心に巡らしていたある日、
珍しく空にも澄んだ青空が広がっていて、
仕事も明るいうちに終わったので、
仕事場からも二十キロ弱、そう遠くないところにある、
河津桜の堤防並木がまだ見頃と聞いたので、急遽車を飛ばした。

しばらく写真を撮り続けたのであるが、
不思議なことに、普段なら花を愛でる感覚だけなのだが、
「花を摘め」と言う言葉が妙に引っ掛かるのである。
今日、この日という意味が少しばかり実感できた思いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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