蹴出し

 

 写真家、土門拳の着物への奥深い視線が面白い。

 こんな随筆がある。

 

 (原文そのまま)

 

 『蹴出し』といっても、今の若い人たちは何のことかわからないだろう。着物を着た女の人が歩くとき、踏み出す足で裾前がひるがえって、下に着ている腰巻きがチラッ、チラッと見えることだ。

 娘は真赤の、人妻は桃色の、そして年増は水色のちりめんの腰巻きがチラッ、チラッと白い足首にからんで見えるというお色気の世界だ。

 つまり、量的には少ないが、それだけにいっそう効果的で刺激的である。色彩が見る人の官能をくすぐるというきわめて日本的な陰微な美の世界の話である。

 そういう効果を上げる歩き方を『裾さばき』といって、昔の娘さんたちが心して勉強したところのものだ。

 (中略)

 

 もはや洋服をやめて着物に戻るということがないように、ズロースをやめて腰巻きへ戻ることもあり得ないだろう。わずかここ二十年か三十年間の変化だが、ズロースの普及が日本の女の姿態を大胆に荒っぽいものにさせ、それがまた女の生活意識なり、美意識を変化させたことは大変なものだろう。

 

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 今、『裾さばき』を見せるために、わざわざ腰巻きを身につけるのは、芸者さんや日本舞踊の人たちだけかもしれないが、私に実態のほどはわからない。

 いつか、日本女性の耽美な蹴出し写真に挑戦してみたいものである。

 

 

 

蹴出しを意識しないで撮った歩く写真

 

 

 

 

 

 

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