四十代後半の頃、写真で何を撮るかで悩んだ。目に映る風景が基本にはなると思ったが、観光地の写真ではありていすぎる。
 人間と自然が共存するような風景はないものかと思案していたときに、家が農家をしている友人が『うちらのような川から引く水と違って棚田の水は地下水とてもきれいだよ』と言った。
稲作の知識がまったくなかった私は、この川もない地で棚田の水がどこから来るのか興味が湧いた。まだ棚田百選などは発想外の時で、わざわざ辺鄙なところまで撮影に来る物好きな人など見かけない。
 最初に訪れたのが島根県の西の外れ吉賀町、合併前の柿の木村にある大井谷棚田。
 そういう意識がなければ、おそらく見過ごしてしまう風景なのだと思うが、意識を変えて観ればれば、視点が変わる。
 石積みの何段にも連なる棚田の地形、横に流れる線形が美しく、城の城壁かとさえ見紛う。
そして、山の上から凄まじい勢いで流れ落ちてくる水路の水、それは飲めるほどきれいだと、
農作業中の方が教えてくれた。
 田んぼの水の入れ替えは、上から下へ自然の理で自由自在、きれいな水が入れ替われば、いい米ができるのは自明の理だ。
 それは、無知な私にして見れば、新発見。自然と人間の知恵が見事に調和している。
 そんな思いを胸に、ファインダーを覗けば、網膜に映る世界は、また新たな世界を私に見せてくれているような気になる。

 

 

 

 



 

 

振袖の振付方を詳しく解説した写真講座を公開しましたので、興味のある方はご覧下さい。

 

 写真集の制作に興味のある方は、こちらを参考にしてみて下さい。

 

 今では遠き青春時代、私が書いたへぼ小説、興味ある方はこちらから