迫りくる原発震災の危険性

 

 今回の能登半島地震で考えるべき重要な問題は、震源域に原発がなかったこと、震源から70Km離れた志賀原発が停止中であったことである。震源地のあった珠洲市は、住民の反対運動で原発の誘致・建設を拒否した、その結果として原発がなかったことが大きく幸いした。

 もし住民運動が敗北し、珠洲原発があったら、当然にも大爆発、炉心溶融は必至であったろう。原発から漏れ出た放射能で、避難ができない人々は大量に被曝したであろうことはすぐに判る。能登半島地震の規模、被害の甚大さは想像を絶する。6000年に一度ともいわれている地盤隆起。兵庫県南部地震の3倍もの長さの断層が動き、それが未知の断層であったのである。このことは、地震調査研究本部の「活断層の長期評価」や中央防災会議などの水準、限界を示している。現在の「科学水準」では、甚大な地震を引き起こす「活断層」を見つけることはほぼ困難であるということだ。

 志賀原発でも相当のダメージを受けた。原子炉建屋の基礎部分で、1号機は957(想定918)ガル、2号機は871(想定846)を観測した。いづれも、想定地震動を超えているのだ。運転中であったなら、緊急停止ができていたかどうか。また、変圧器が破損し、外部電源5回線の内2回線が使えなくなった。海側の物揚場の舗装部が沈下し、最大35cmの段差が生じている。

 驚くことに、2023年3月に規制員会は志賀原発の敷地内の断層は10年前の判断とは逆に「活断層」ではないと認めたばかりであった。巨大地震の発生の可能性を調査している「地震調査研究本部」ですら「未知の断層」と言っているばかりか、原発を稼働するために活断層を過小評価したり、「ない」ものと報告してきた電力会社のお抱えの御用学者の見解などで原発を再稼働してはならない。

 〈地震・火山大国日本の地殻変動——『大地動乱の時代』〉において示した2000年以降の地震で、2003年宮城県沖地震では東北電力女川原発が、2007年能登半島地震では志賀原発が、想定を超えた揺れを記録している。さらに同年中越沖地震で東京電力柏崎・刈羽原発では想定を3.8倍も超す震度7相当の揺れがあった。

九州電力玄海原発、川内原発、中国電力島根原発、四国電力伊方原発、北海道電力泊原発など、分かっている活断層が原発のすぐ近くにある。関西電力の活断層の巣である若狭湾に並ぶ、敦賀、美浜、大飯、高浜の原発群。東海地震の震源域の上に立つ浜岡原発。これら日本の原発はどれ一つをとっても、地震・火山による、地震動・地殻変動に耐えられるわけがない。

 

 2023年岸田政権は、「GX推進法」に引き続いて「GX脱炭素電源法」を成立させた。言うまでもなく、この法律は福島第一原発事故以降の「原発依存から脱却」する政策から「原発依存への転換」「原発回帰」をその目的にしたものである。

それは、危険極まりない原発〟に依存してまで、日本が原発・核開発の大転換をおこなう、ということを国家の戦略目標に据えたことを意味する。現実的には、40年の稼働を超えた老朽原発を、とにかく(20年間)再稼働させるものである。いまや、日本列島は、老朽原発に大地震が襲う、こういう時代になったことを能登半島地震は示したのである。

 

 原発震災から私たちが逃れ得るとしたら、それは、一刻も早くすべての原発の稼働を停止し、廃炉へと向かうしかない。

 

2024.01.21  木霊