★イスラエル軍の「報復」攻撃を正当化させる10月7日のハマスの奇襲攻撃

 

 ネタニヤフ政権は、「報復」攻撃を正当化する口実として、2023年10月7日のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃を利用している。そして、「自衛」のためと称して、ハマスをせん滅することを前面に押し出して、あたかも民間人は攻撃対象から除外しているかのように装っている。しかし、ネタニヤフ首相が非戦闘員に危害を加えないと言いつつ、「一般市民に対し、南部の安全な地域に避難せよ」と労働者・人民に命じたうえで、その南部を容赦なく攻撃して、さらなる犠牲者を増やしているのだ。ガザ地区での死者数は、2万人を超え、人口の1%にも上っている。この事実は、パレスチナの労働者・人民たちを民族浄化することを真の目的にすえて、直接的な殺害を行っている、としか考えられない。

 10月28日のネタニヤフ首相らの共同声明の内容を想起せよ! 「声明」では、旧約聖書を引き合いに出したうえで(23.12.02付けのわたしのブログを参照のこと)、「ガザ地区での戦争は長く困難なものになるだろう。われわれはその準備ができている。これは我々の2度目の独立戦争だ。祖国を守るために戦います。我々は戦い、退却はしない。陸でも海でも空でも戦います。地上と地下の敵を破壊します。我々は戦い、勝利する」、とイスラエル国民を鼓舞し、パレスチナの労働者・人民に対する「報復」攻撃という名のジェノサイドを正当化している。許せない!

 

★「南部への避難」を強要されたパレスチナ人民の地獄絵の様相

 

 イスラエル軍の砲撃からかろうじて生き延びた人々は、ガザ地区の不衛生な避難所や大雨で冠水する路上に設置されたテント内に押し込められ、砲撃の爆音に怯え、寒さに打ち震えている。

 そして、生活支援物資の搬入は、イスラエル軍による攻撃の再開により、ほとんど入らない状態に陥っている。「子どもたちと家族は、塩分濃度が高かったり、汚染されたりした水を使わざるをえない。安全な水がなければ、今後数日間でさらに多くの子どもたちが水の欠乏と病気で命を落とすことになる」、とユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長は、警告している。

支援物資の搬入をイスラエル政府が抑えこんでいるため、ガザ地区の最南端のラファでは、数百人のパレスチナの住民たちが、手にした容器一杯分の食べ物を求めて、炊き出し場に幾重にも人垣が重なりあい、争って容器を差し出す様子が報じられている。国連世界食糧計画(WFP)によると、ガザ地区では、11月24日から12月7日までに人口の93%にあたるおよそ208万人が、丸一日食料がない状態が常態化して「危機的」な食料不足に直面しているとのこと。現在搬入されている水や食料などの支援物資は、必要量の1割に過ぎないのである。そして、17%に当たるおよそ38万人は、5段階のうち「破壊的」な状態に陥っている、としている。

 トイレも破壊されたため不足し、3~4時間待ち状態。待ちきれないから、路上に汚物が放置され、シャワーもなく、衛生状態は最悪だ。

 犠牲者の遺体の多くは、外に出るとイスラエル軍の標的にされるため、埋葬もできずに放置され、悪臭を漂わせている。爆撃で飛び散った肉片は、誰のものなのか判明もつかず、瓦礫の中で突き刺さったまま腐っていく。

 薬や生理用品を含む衛生用品なども不足し、病院は破壊され、医療従事者や支援者たちへの恫喝的な攻撃が繰り返されている。

パレスチナのあらゆる施設の破壊――モスクはもちろんのこと、パレスチナの労働者・人民たちの歴史の記録を保管している図書館も、あたかもネタニヤフ政権は、パレスチナの人民の存在したことそのものを消してしまおうとしているように思える。これはまさしく、「民族浄化」そのものであると言える。

 

国連安保理が「人道支援促進決議」も、米に配慮して「停戦」文言欠く!

 

 国連安保理は、12月22日、パレスチナ・ガザ地区の人道支援を促進するために「即時に敵対行為の中止」(=即時停戦)の文言が抜けた「持続的な敵対行為の停止につながる条件の整備」を求める決議を採択した。理事国15ヵ国のうち日本を含む13ヵ国が賛成し、米国とロシアは棄権した。

 当初、アラブ首長国連邦が作成した決議案にはこの内容が含まれていたが、イスラエルを擁護し、停戦を支持しない米国が拒否権を行使するのを回避するために、米国が受け入れやすい文言の修正を重ね、採決は当初の予定より4日も延期されたとのこと。

その結果、ハマスについての言及はせず、すべての人質の即時かつ無条件の解放を訴えたものとなり、「敵対行為の停止」や支援物資搬入をめぐる国連の権限拡大などを呼びかけた当初の草案から内容は大きく後退した。ガザ地区状況に対する「重大な懸念」と共に、大規模な人道支援の許容と促進▽民間人の保護▽無条件での人質解放▽救援物品の監視と配布を担当する国連調整官の任命などの要求だけが盛り込まれた形になってしまった。

 米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は、拒否権は行使しなかったものの、「決議」にはハマスへの直接的な批判がないとして、棄権した。ガザ地区で即時停戦が行われるべきだという国際社会の世論に、米国が再び単独で対抗し、イスラエル・ネタニヤフ政権支援の側に立ったわけである。

 一方、ロシアのネペンジャ国連大使は、米国への配慮で内容を後退させた決議は「安保理にとって悲劇」であると批判し、「敵対行為の停止」の文言を復活させる修正案を提出した。これには、10ヵ国の賛成を得たが、米国が当然にも拒否権を行使し、否決された。

 さて、この「決議」の採択をめぐっての現実を観るや、なんとも国連の欺瞞性が明らかではないか。グテーレス事務総長が国連憲章第99条に基づき「人道的大惨事の回避」を求めた際にも「停戦」決議が採決されないばかりか、パレスチナの労働者・人民に対して非道極まりないジェノサイドを行っているイスラエルを支援する米国に対して、今日のガザの惨状を知りつつもまだ配慮する、そのような米国の主張する「人道」なるものがいかに欺瞞的であるかが、いや益々明確になったと言える。さらに、国連安保理で「人道支援決議」が採択されたからといって、問題は解決されないのだ。

 

 *UAEのヌセイベ国連大使は、「(内容は)完璧ではない。この苦しみを終わらせることができるのは停戦だけだ」、と記者団に語っていたそうである。

 

 ハマスとイスラエルは、当然にも、それぞれ安保理決議に反発した。

ハマスは、「米国が決議案の本質を取り除き、中身を伴わないものにするために努力した結果」だと非難した。そして、この「決議」に対して、ガザ地区の「壊滅的な状況」を解決するには「不十分だ」とする声明を発表した。「声明」は、「決議」に停戦を求める文言が入っていない点が問題だと指摘し、「米国が決議案を骨抜きにしようとしてきた」と非難。そのうえで「ガザ地区北部を含む全域に十分な量の支援を行き渡らせるのは安保理の義務だ」と主張。

 イスラエルは、「決議案は不要であり、国連が紛争に肯定的な役割を果たせないことを証明したもの」だと主張。

 

 このことを受けて、米国とイスラエルの首脳の電話協議が行われた。バイデン大統領が「民間人を保護しなければならない重大な必要性を強調した」としたのに対し、ネタニヤフ首相は、「戦争の目的(=ハマス壊滅)を達成するまでイスラエルが戦争を続けるという意思を明確にした」と語ったとのことである。

 戦時内閣のガラント国防相とガンツ前国防相は23日、そろってガザ地区北部を訪問。ガラント国防相は、「銃撃やロケット発射、テロの温床となっている建物は全て破壊されなければならない」と主張。ハマスのガザ地区最高指導者シンワル氏らについて「彼らはここでハマス部隊がどう終わりを迎えたのか分かっている。イスラエルを攻撃した者は代償を払わせ、壊滅する」と述べ、ハマス指導部を標的にする姿勢を鮮明にした。

 国連安保理決議直後の両首脳の電話会談をみると、ネタニヤフ政権が国連の「決議」など眼中にないことがよくわかる。しかも、バイデン大統領の「民間人を保護しなければならない」という発言に対しても、まるで聞く耳持たない態度を示している。

 わたしたちは、ネタニヤフ政権を打倒して、即時停戦を訴える世界の労働者と連帯していく必要がある、と思う。

 

即時停戦! イスラエル政権のパレスチナ住民たちへのジェノサイド弾劾!

全世界の労働者・人民は、民族対立および宗教対立をのりこえて連帯し、イスラエル政権の蛮行を許さず、ハマスの軍事行動も止めよう! 

自国政府のイスラエル支持に反対しよう!

欧米権力者によるイスラエル支援を弾劾しよう!

イスラエルの労働者・人民は、シオニズムの呪縛を解き放ち、ネタニヤフ政権を打倒せよ!!

2023.12.25 (🦉 シマフクロウ)