アメリカ帝国主義のご都合主義・自己欺瞞

 

 「所変われば品変わる」ということわざが日本にはある。土地が変われば、風俗・習慣、言語などが変わることをいう。欧米のプラグマティスト、合理主義者にはその味わい深い「こころ」、心情のニュアンスが通じないであろう。

 パレスチナ・ガザ地区へのシオニスト・ネタニヤフ政権が行っているジェノサイドは「人非人の鬼畜のごとき極悪非道な行為」である、と私は端的に言っている。人であるにもかかわらず、人の道から外れた、倫理のひとかけらもない畜生のごとき、鬼のごとき所業である、と。シオニスト・ネタニヤフが「アマネク」を援用し、エルサレム副市長が言った「パレスチナ人は人間ではない、・・・アリ(蟻?)だ。生き埋めにしてしまえ」というユダヤ教信奉者のいう「非人」とは大違いである。ある人、民族を「動物」と言いなすということと、人であるにもかかわらず「人でなし」ということとは、全く異なる。仏教文化の影響ではぐくんできたイデオロギー、精神風土とユダヤ教イデオロギーとの違いなのであろうか。

 

 米欧帝国主義国家権力者たちは、ようやくイスラエルのパレスチナ人ジェノサイドを見て見ぬふりをしていたことが、国際的な労働者・人民から糾弾され国際社会から孤立していることを感じ始めた。それは、イスラエルが行っている、パレスチナ人ジェノサイドが「人道」の敵、という本質が露呈したからだ。だが、彼らは相変わらず、イスラエルの「自衛権」を認めずハマスを「テロリスト」と認めないことを唯一の根拠にして、イスラエルを擁護し、経済的、軍事的に支援しているのである。イデオロギー的には、イスラエルによるパレスチナ人ジェノサイドに反対している労働者・人民を「反ユダヤ主義」だ、と断罪してもいる。ハマスの奇襲攻撃――それ自体間違っており、自暴自棄的な攻撃――を「テロリストによる犯罪行為」であり「自衛権」の行使である、と。ただ行き過ぎは良くない、と言うだけである。

 しかし、その奇襲攻撃すら、被害をことさら大きくするために「イスラエル国軍が、同胞であるイスラエル人を銃殺し、街を破壊した」という報道すら流れているのである(FOXテレビなど)。ドイツが初めてNATO軍に参加し軍事攻撃した「ユーゴ空爆」の際の謀略的手口を彷彿させるではないか。また、かれらは、ハマスのイスラエルへの奇襲攻撃の物質的根拠、歴史的・論理的根拠を否定するのである。それは、「歴史の偽造」へと直結している。

 さらには、イギリスの植民地支配からインドを開放したガンジーは「テロリスト」だったのか(彼は生前、ユダヤ人のパレスチナへの入植・イスラエル建国を批判していた)? 独立宣言において「人民のための・・・」と謳ったアメリカで、「ネイティブアメリカン」とともに、その「人民」に入っていない黒人(奴隷)の人種差別から黒人の解放を目指した、キング牧師はテロリストなのか? アパルトヘイトから南アフリカ人民を開放した、ノーベル平和賞を受賞したマンデルは2008年までアメリカ帝国主義権力者によって「テロリスト」という烙印を押されていたのだ(南アフリカ共和国は、現在、パレスチナ停戦するまでの間、イスラエル大使館から大使を召還する処置をとっている)。これこそ、アメリカをはじめとする帝国主義権力者のご都合主義と自己欺瞞を示して余りある。そして、自分たちがすべて正しいという自己絶対化である。

 

 今、問われているのは、イスラエルの植民地的支配からのパレスチナ人民の解放である。

 

 ハマスはいまだに「最高幹部」である指導者シンワル、カッサム旅団ディフ司令官は、逮捕拘禁されていない、「消去(殺害)」されていない。6000人が殺害されたと報じられているが、残りの約20000人近くが「地下トンネル」?に潜んでいるのか、人民の海の中に潜伏しているのかわからない。

  ハマスは2017年に綱領を修正したという。川上泰徳によれば、「第三次中東戦争前の1964年6月4日までの休戦ラインを国境とする」とした。つまり「2国共存」を認めるというような現実路線に転換したのだ。だが、それすらパレスチナ全土をイスラエル国とし、他のあらゆる民族、宗教を排除した「ユダヤの郷土」建設を邁進し、次々と占領地を拡大しているイスラエル、およびそれを容認しているアメリカ・欧州帝国主義者の前には観念的すぎる。

 

 「この世の地獄」と化したガザ、「崩壊寸前にある」(サラ・ロイ)にあるガザ、このあらゆる意味で絶望状況にあるガザで、ハマスは、パレスチナ人のよりどころとして生き続けるであろう。だからこそ、ハマスは一日でも早くイスラム教の宗教的呪縛から自らを解き放ち、その過程を対象化しつつ、パレスチナ人民を再組織化しなければならない。

 

 今、世界にはパレスチナ人民に連帯し、イスラエル国家のジェノサイドを糾弾する、労働者・人民が決起している。ストライキを行っているイギリスの労働者がいる。イスラエルにもネタニヤフの帝国主義の圧政と抑圧、金融・独占資本による搾取、収奪されている労働者がいる。日常的に搾取され、どん底に突き落とされている労働者階級は、パレスチナ人の絶望状況を受けとめ連帯しようとしているのだ。

 世界の労働者・人民は団結し、シオニスト・ネタニヤフ政権の打倒を目指し、アメリカのイスラエルへの「政治的、経済的、軍事的支援」を許さない闘いを創りだそう。

 私たちは、国家的分断と民族主義的・宗教的な対立、それらの政治的=ブルジョワ的解決の限界を自覚し、これをのりこえてゆく共産主義による「人間の人間的解放」を目指してゆく「母体」を創りだしてゆかねばならない。

 

2023.12.24 木霊