「この世の地獄」

 

 ガザ北部の惨状に対しWHOは、「死の地帯」と表現した。さらに南部のラファなどへのイスラエル軍のジェノサイドに対し、国連パレスチナ難民救済事業機関のラザリーニ事務局長は「この世の地獄に終止符を打たれるのを願う」、と発言した。

 シオニスト・ネタニヤフ政権によるこの残虐極まりない、悪逆非道なこのジェノサイドにより、わずか2ヵ月で1万人以上の子供が殺された。けが人は、治療を受け入れる病院が破壊され、2、3日食事にありつけず、水も飲めない。まさにガザは「この世の地獄」である。さらに、イスラエルのエルサレム副市長は〝生ぬるい“ とばかりに、パレスチナ人は「人間でも動物でもありません。彼らは人間以下の存在であり、そのように扱われるべきです」。「ナチス」、「アリ」なのだから「拘束されたパレスチナ民間人を軍用ブルドーザーで生きたまま埋葬するよう」呼びかけた。

 このイスラエルの鬼畜のごとき蛮行による「この世の地獄」という惨状を前にして、キリスト教の司祭がガザの市民に「アザーンを朗誦する人がいなくなり、自分がもし生きていたら、ムスリムのために1日5回、アザーンを朗誦します」と語り、イエス・キリストの生誕の地として知られるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区のベツレヘム聖誕教会は、ガザ地区パレスチナ人支援のためクリスマス全催事の中止を決定した。「イエスが今日生まれたならば、ガザの瓦礫の下で生まれたはず。ガザの子どもたちのひとりひとりの顔にイエスのお顔が映ります」、と。

 ローマ教皇は、10月にも、サンピエトロ大聖堂の広場に集まった信者らを前に、「武器を置く可能性を放棄してはならない。我々は『停戦』と言おう。戦争は常に敗北だ」、と述べている。

 

 他方、イスラエル本国においては、一部の敬虔なユダヤ教徒たちが、ネタニヤフ政権のパレスチナ人ホロコーストを批判している。かれらは、非暴力の抗議行動を行い、イスラエル治安・警察権力による不当な暴行を受けている。また、「平和を求めるユダヤの声」というユダヤの団体は、イスラエル国防相の「ガザへの食料・電気・水・燃料を全て遮断する。我々は人間動物と戦っていることを念頭に行動する」との発言に対し、「私達はユダヤ人として人間を動物呼ばわりしたら何が起こるか知っている。誰にも同じことが起こってはならない」、と声明を発表した。アメリカではこの団体が、抗議デモを繰り返し、議会に雪崩れこんだり、『自由の女神』の前で座り込みなどを行っている。

 ユダヤ教徒のすべてが、シオニスト・ネタニヤフ政権のパレスチナ人ジェノサイドを肯定している訳ではないのだ。

 

 そして、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどで万余の労働者・人民が「ガザに平和を!」「パレスチナに自由を!」などのスローガンを掲げデモを繰り返している。それだけでなく、イギリスの消防士が、兵器工場の労働者が、ストライキを行い、イスラエルのパレスチナ人ジェノサイドに抗議している。

 イスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒たちが、イスラエルの極悪・非道な行いに対し批判し、抗議するだけでなく無宗教の労働者、人民が立ち上がり、一日も早く戦争が終わることを願い、抗議行動を行っている。

 

 これらのことは、「反ユダヤ主義」の再来として考えるわけにはゆかない。

 

 確かに、シオニズムとその運動は、1881年ロシア帝国での「ポグロム」に端を発しているとはいえ、第二次世界大戦のさなか、帝国主義国諸国の植民地争奪戦争における「民族主義」の高揚、とりわけドイツの「血と土」を理念とした「超国家主義」者、ナチス・ヒットラーによるユダヤ人のホロコーストが直接的な原因である。それ故にそのような悲劇を繰り返えされたくない、とユダヤ人が、自らの「信仰と土地」を求め「ユダヤ人の郷土」たるパレスチナに入植し、アメリカ、ソ連の関与のもとに、イスラエルを建国したのだ。そのようなことを想起すると、パレスチナ問題は、帝国主義とスターリン主義・ソ連にその根拠があるといえる。

 そして、この帝国主義国家そのものが、プロレタリアートとブルジョワジーの階級的対立を物質的基礎として「国民国家」「民族国家」として成立した「共同体の幻想的形態」(マルクス)の現実形態なのであることを忘れてはならない。

 

 帝国主義国家イスラエルのシオニスト・ネタニヤフによる、パレスチナ国家への侵略戦争、そのパレスチナ人ジェノサイド――これを経済的・政治的・軍事的に支援し、支えているアメリカ帝国主義と西欧帝国主義。

これこそが21世紀現代の悲惨である。

 

 2023.12.16 木霊