異常気象とはどういうことか、災害とはどういうことか

二酸化炭素地球温暖化を主張する人々は地球温暖化の結果、異常気象によって災害がおきることに危機感を昂じさせている。人類存亡の危機となるとさえ煽っている。二酸化炭素地球温暖化説を唱える学者、エコロジスト、環境NGOの人々は、地球温暖化→異常気象→災害と結論してしまうのである。この三者は直接関係ない。にもかかわらず、異常気象は二酸化炭素地球温暖化のせいだ、と結論するのである。

他方、現代より2℃も暖かった時期、もっと暖かった時代を人類はのりこえてきたという懐疑派・否定派の反論はそれ自体は、正しいのである。しかし、その反論が気候変動は自然の周期性であるのだから問題ない、安心せよ、というノンAを対置するにすぎないことが問題なのである。あるいはノンAを示す過去の億年単位の自然変動の「気象観測」データーや、それ自体は、気候学者が発見した重要な観測データーなのであるが「太平洋10年規模振動」、「海の50年振動」を対置する。そこから類推して、「ナチュラル・ハザーズ」など起きない、根拠のない恐怖を煽っている、と弾劾している。現実肯定主義、という所以である。

確かに、温暖化であろうと、寒冷化であろうと、人間はそれらに関係なく自然災害に対応するのであるし、してきたのである。それは、人間は「受苦的・能動的存在」(マルクス)であるということを主体的根拠としているからなのである。そして、常に歴史的、社会的に制約された形で自然災害に対応してきたのである。対応の仕方に歴史性・階級制が刻印されているのである。環境問題、自然災害と称するものの要因は常に「社会」にあるのである。そして現代の環境問題、自然災害はまさしく「人災」以外の何物でもない。資本主義国では資本の自己増殖のために、狩猟による野生種の絶滅に追いやったり、耕作や放牧、工場コンビナート建設、住宅造成などなどによる森林伐採、酸性雨による森林枯れ、など(自然)環境をことごとく破壊してきたのである。さらに、自然災害への対策そのものに、常に繰り返される対策の不備や手抜きなどのゆえの被害の規模や被害のこうむり方に、階級矛盾が刻印されているのである。ソ連圏などのスターリン主義国では、反マルクス主義故に生産力を物神化し、資本主義と見まごうほどの自然破壊を繰り返してきた。アラル海に流れ込む川流域の農業用取水によってアラル海が消滅の危機にさらされている。さらに、ウラルの核惨事、チェルノブイリ原発事故による大地の放射能汚染を見よ! 中国スターリン主義者による新疆ウイグル地区の砂漠化、地下核実験、地上核実験などの放射能汚染もしかり。常に自然破壊とともに労働者人民が犠牲になってきたのである。

スターリン主義の崩壊後の帝国主義や国家資本主義の今日、資本の自己増殖のために、人間を物とし「生き血をすすって自己増殖する資本」は、人間を含むあらゆる自然を手段と化し「使い捨て」にしてきているのだ。さらに、独占資本家の、国家資本家の利潤を犯さない限りでの災害対策しかしないという「安全対策の資本家的限界」によって「人災」は必然化しているのである。このようにして自然と人間(社会)の物質代謝は疎外されているのだ。「自然の助力なしには生きられない人間的自然」(マルクス)の否定的存在であり、人間解放の主体たるプロレタリアートは環境破壊、自然破壊の根拠を明らかにし、その根本的解決のために立ち上がらなければならない。

   気候変動の学問的進化のために

2018年オーストラリアで80年ぶりの酷暑、47℃を記録した。今年は山林火災に見舞われている。昨年、今年の日本に上陸した台風は(数十年間の間で)これまでにないものと言えるかもしれない。2018年はサハラ砂漠で雪が降ったり、ナイアガラの滝が完全に凍結してもいる。これらのことは異常気象と言えると思うが、まずは、「地域振動」とか「〇〇年振動」と呼称されている、数十年ごとに一定の地域で繰り返される気候の変化かもしれないのであり、地道な観測調査が必要なのである(気候には数十年ごとに繰り返される多くの「振動」的現象がある。太平洋のエル・ニーニョ、ラ・ニーニョ、太平洋振動、北大西洋振動、北極振動など)。さらに「熱圏が寒冷化している」「ミニ氷期になるかもしれない」(NASA)という報告もある。私は、温暖化だ、とか寒冷化が始まっているだとか結論するのは早計だと思う。それほど人間は、気候変動についてわかっていないのである。むしろ、現に生起している「異常気象」の現象論的把握を徹底して行うことが急務であると思う。我々の認識論を適用すれば、このような、異常気象と言われることの現象論的把握を実体論的把握へ、本質論的把握へと下向分析をしてゆくことが重要であると思う。気候変動の場合、普遍本質論が欠如している、ということが自覚されねばならない。日本の2018、2019年の台風の襲来は、(周期的に繰り返される)エル・ニーニョと「太平洋振動」のため、太平洋の温度上昇が原因だとおもわれるが、この日本的特殊性を踏まえ温暖化・寒冷化がどのように影響しているのかを究明することが必要だと思う。これ自体が数十年の観察・調査が必要な代物であると思うが。本質論的把握には、気候学、考古学、地質学、化学・物理学などの諸科学を適用しなければならない。

 

2020.02.15